「二人の見てきた姿」
小さい家の中……そこには四人の人たちが住んでいた。
正確に言えば、人間が二人とホムンクルスが二人。
戦いを終えた彼らは、平和な日々を送っていた――
ゲイザとイルアは軽い身支度をしていた。
その様子を、ラティーとルミィーはテーブルの上でただ見ていた。
「じゃ、私たちちょっとルアグ博士のとこまで行ってくるから、留守番お願いね」
「大丈夫、すぐ戻ってくるさ。それじゃ、行ってくる」
「いってらっしゃいですの!」
「気をつけてですー」
二人の妖精型ホムンクルスの言葉で送られ、二人は家の外へ出て行った。
今回はイルアの研究でルアグ博士の所へ資料を取りにいくことになっていたので、多分そ
れだろう。
あれから数ヶ月。
平和が訪れてから、ゲイザとイルアは自分のやりたいことを見つけ、約束の通りずっと一
緒にいることにした。共に歩むことを決めたのだ。
ゲイザは傭兵の仕事を。
イルアは母親の意思をついで、様々な研究を。
そう思うと、ラティーとルミィーはどこか居心地が悪い気がした。
「あの、ラティーさん」
「ん? どうしたですの?」
「ちょっと、お話しません?」
すると二人はテーブルの横に腰を下ろして、足を楽にさせた。
「えっと……私たち、このままここにいていいのかな〜、と……ゲイザさんやイルアさん
は一緒に居て欲しいっていってたですー……でもでも、なんか迷惑かけてる気がして」
「うん、私もそれは思うですの」
その言葉とは裏腹に、ラティーは笑っていた。
そんなラティーを、ルミィーは少し謎めいた顔で見ていた。
「でも、あんまりそういうことを心配すると、ゲイザさんが怒るですの!」
「そうですか〜?」
「はいですの!」
ラティーはすくっとルミィーの目の前に飛び、腰に手を当てた。
「そんなこと気にしなくていい。お前たちがそんなこと心配するなー、とか言うですの、
絶対!!」
「あ、それはわかる気がするですー」
そんなゲイザの真似をしたラティーをみて、ルミィーは口に手を当てて笑った。
やがて笑いが収まると、笑いで出た涙を拭ってラティーに微笑んだ。
「ゲイザさんもイルアさんも、優しい人ですからねぇ……そういえば、ラティーさんは結
構前からゲイザさんと一緒に旅をしてたんですよね?」
「はいですの! ……でも、あのときのゲイザさんは少し、元気がなかったですの」
ラティーとゲイザが出会って、もう半年の年月が過ぎようとしていた。
マルディアグからグラディームへ。
ルアグ博士からの頼みで「マルディアグを救ってくれる人を連れて来い」と言われ、転送
機で向かった先はラミアズ村だった。
そこで、ゲイザと出会い、タクス、ルベリィと出会った。
だけど……ゲイザは悲しい過去を背負っていた。
大切な人を――ミリアを殺してしまった。
そんなこともあり、ゲイザは少し元気がなかった。
それからマルディアグに向かい、イルアと出会った。
ゲイザは、そんな彼女を救うべく、再び人のために戦うことを決めた。
けれど、そんな望みさえも、儚く消えてしまった……
「それからまた元気になったんですけど、また元気がなくなっちゃったんですの」
とラティーは再び机の横に腰を下ろした。
「イルアさんのことですか?」
ルミィーの言葉に、ラティーは小さく頷いて見せた。
「大体話は聞きました……というか、盗み聞きしたんですけどー」
「え? そうなんですの?」
「あ、でもさっきのラティーさんの話は初耳ですー。私はゲイザさんが何故記憶を失って
いたかを聞いただけですー」
「じゃあ、記憶を失っていたときのゲイザさんって、どんな人だったんですの?」
「グライアという名前だったときのゲイザさんは、ちょっと怖かったですー。それでも、
少し優しかったですー……」
記憶を失ったゲイザは、ルディアに捕らえられ、アラグダズガにグライアとして利用され
ることとなった。
闇の心だけしか持たなかったゲイザは、元々光が強いので少しのショックで元に戻ってし
まうかもしれない。そう思ったルディアはルミィーという妖精型ホムンクルスを作り、そ
して監視役としてつけた。
ルミィーはグライアを監視役として見ていた。
しかし、記憶を取り戻してからも、ルミィーは一緒に居ることに決めたのだった。
それは元マスターのルディアの意志でもあった。
「へぇ〜……そんなことがあったんですの」
「そうですー。楽しかったですよー」
そして二人は笑い合った。
「平和になって、よかったですの!」
笑うラティーとは別に、ルミィーは小さくため息をついて見せた。
「でもでもー、まだ見ていなきゃダメですねー……ゲイザさんも、イルアさんも」
「監視役、ですの?」
「はいですー。ラティーさんも、監視役ですー」
「ちょっと響きが良くないけど……私たちに出来るのはそれくらいですの」
これからも沢山大変なことがあるけれど、それはまた別のお話で……
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