「失われた光の過去」
ファムレイグのとある洞窟の中に、誰かが歩く音が響き渡る。
二名のファムレイグの兵士がこの洞窟へ来ていたのだ。
「まったく、国王も物好きだな……こんな古い遺跡に何があるんだかしらねーけど
生かされる身にもなれってんだ、ったく」
「ホントホント、まったくだ」
今回の任務の愚痴を言っている二人の兵は、とある石の部屋にたどり着いた。
石の祭壇に、人の大きさぐらいの箱が置いてある。その両端には未だに消えない
炎がついて、部屋全体を照らしていた。
「あの箱の中身を持ち帰ればいいんだよな?」
「俺はそう聞いたぜ?」
「んじゃ、さっさともって帰りますか」
二人の兵は、その石箱の重い蓋をゆっくり開けた。
「女の子、だって?」
中には金髪の女の子が一人、入っていた。
「もって帰れって、人じゃないですかい」
「でも、仕方がねぇだろ? もって帰れって言われた以上、俺たち兵士は持って帰らないと
金はもらえねーし」
「ま、まあそりゃそうだな」
「そんじゃ、俺が連れて行くから……」
そういった兵士が、その女の子に触れようとしたとき、光が遺跡全体を覆いつくした。
まぶしい光が収まると、その女の子は箱の外から出ていた。
「っ……遺跡? やっと眠りから開放されたのね」
「生きてる……」
一人の兵士は少し吃驚して座り込んでしまった。
そしてもう一人の兵士はミリアに近づいた。
「ちょっと譲ちゃん、一緒に来てくれないかな?」
「あなた、人間?」
「へ? あ、ああ」
金髪の少女はその兵士の返事を聞くと、手のひらを兵士に向ける。
「人間は、殺す」
その手から閃光が放たれた。
一人の兵士が胸を貫かれ、血を吹いて倒れる。
一瞬の攻撃だったが、即死だった。
「ひっ、ひぃぃっ!!」
「あなたもよ……人間、なんでしょ?」
「う、うわぁぁぁっ!!」
再び閃光が手のひらから放たれると、その兵士も倒れた。
二人の兵士と殺した少女は遺跡から出ようとしたとき、再び兵士が現れた。
同じような格好をした人間が、八人。そして黒いフードを被った男が一人。
計九人もの人間が、少女と取り囲んでいた。
「ミリア=ビリアムズ。静かにしてもらおうか」
「うるさいっ、私は人を殺す兵器だ」
「そう、それがドール……人を殺す為だけに精霊に作られた兵器」
「くっ……」
ミリアは人が嫌いだった。だから目覚めた瞬間に人間といった物を二人殺した。
「お前のペンダントが欲しいだけだ」
「これは駄目っ!!」
「お前の肉体を切り刻んでそのペンダントを貰う」
「…………私を、助けてっ」
辺りが光に包まれる。
そしてその光が消えたとき、取り囲んでいた中心にいたドールはいなかった。
「っ……思い出せない」
テレポートをした衝撃で、少女は全てを忘れていた。
自分が何者か。自分の名前さえも。
「私、誰……?」
遺跡からテレポートで来ていた場所はどこかの森の中。
当てもなく、自分が何者かわからなくなっていたため、何をすればいいかもわからない。
と、そのとき、目の前に一人の男が現れた。
「見つけたぞ、ミリア=ビリアムズ……三日もその場で眠っていてくれていたおかげで
貴様の気配を感じ取れた」
「ミリア、ビリアムズ? それが私の名前……?」
男は何も言わず、剣を取り出す。
「消えろっ!!」
「いやぁっ!!」
ミリアは走り出した。男に追いつかれると、殺されるという恐怖に怯えながら。
走り続けると、そこは湖になっていて逃げれない状態になってしまった。
「なんなんですか、あなたは……なんで私を狙うの!?」
「貴様のもつペンダント――それが欲しいだけだ」
すると少女は、胸にかけてあるペンダントに両手を添えて、
男を睨みつけた。
「これだけは、これだけは渡せない……!!」
なんでかは知らないけれど、渡せない理由があることだけは知っていた。
何も知らないけれど、なんとなく知っていた。
少女は呪文を唱えた。
ペンダントに添えた両手から光がかすかに漏れているのがわかった。
「私を助けて……お願い! テレポート!」
あたりが一瞬にして光ると少女は光となってどこかへ消えてしまった。
そして、テレポートの先はゲイザの家の付近の森。
モンスターに襲われているとき、その家に飛び込み、ゲイザと出会うこととなった。
そして、失われた光の記憶はもう戻ることはなかった。
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