「闇の魂」
ゲイザ達が光の精霊に許しを得てから、
倒れたミリアを休ませるためにイファムという村に来ていた。
ゲイザは宿屋の部屋を取り、ミリアの部屋のベットに寝かせた。
「ふう・・・・・・疲れた・・・そうだ、マイ。気分転換に散歩してくるといい。
俺はミリアの面倒をみるからさ。遠慮せずに行って来い」
「・・・はい、それじゃそうさせてもらいます」
マイは部屋から静かに出て行った。
宿屋から外に出たマイは、静かに深呼吸を行った。
深呼吸をし終わると、ゆっくり人のいない村の池に歩いていった。
誰もいない池の近くで、マイは一人、その場に座った。
「・・・・・・一人・・・久しぶり・・・」
少し寂しそうな顔をしてから、池の水面にに顔を覗き込んだ。
そして水に映った顔を眺めていた。
「ワタシは、子供で段々大きくなっていった・・・でも、昔の記憶がある・・・・・・なんで・・・」
水に映った自分の顔を見つめながら、昔のことを思い出していた。
それは、マイがガラドに拾われてから9年目のことだった。
マイはそれまで、普通の元気な子として育ってきていたが、
突然ある日、元気をなくしてしまった。
それはあることを思い出していたからだった。
マイは外のいつも遊んでいる木の下で、いつもどおりに遊んでいた。
そのとき、いきなりマイに異変が起こった・・・
「痛い・・・・・・ワタシの・・・頭の中に・・・何かが、入ってくる・・・・・・」
木の下で頭を抱えてマイはしゃがんだ。激しい頭痛に襲われていたのだ。
それと同時に、見たことも聞いたことも、知ったこともない何かが
頭の中に流れ込んできた。
「何・・・?何なの・・・・・・どぉー・・・る・・・?
や・・・み・・・・・・?でぃおらいが・・・?封印・・・・・・?ココロ・・・・・・?」
知らない言葉が頭の中に津波のように流れ込んでくる。
「何・・・なんなの!?・・・・・・ワタシは、誰・・・・・・!!?」
(ワタシはドール・・・・・・人じゃない)
誰かの知らない言葉が頭の中で聞こえた。
それからしばらく経って、頭痛が治まった。
「ドール・・・・・・ってなんだろう・・・・・・・」
マイは小走りで、ガラドの家へと戻っていった。
ガラドの家へ戻ると、マイはガラドの部屋へと駆け込んだ。
都合よく、ガラドがいない。マイはガラドの部屋にある、
本棚から本を色々取り出した。
薬の調合について、モンスターについて、武器について・・・・・・
そこで見つけたのが伝説についての本だった。
「伝説・・・・・・これかな・・・・・・・・?」
マイはその本を手にとって見た。
最初のページをめくると、こう書かれていた。
『光を見る少女。闇を見る少女。そして、光と闇を持つ少年。
心は悲しみを生む。また心は憎しみを生む。
人は心無くして生きてはいけない。
心には消えない光があることを人は知っている。
また、消えない闇もあることも知っている。
今一度、光と闇が交えるとき世界は終焉に向かう。
光と闇の勇者、背中に翼を持つもの。
聖なる剣で世界を救う。』
はじめて見るマイには何のことかさっぱりわからなかった。
さらに次のページをめくってみた。
そこに書かれていた絵は、人と人が争い、殺しあっている絵。
そして、文はこう書かれていた。
『昔、人と人は憎しみ合い、殺しあっていた。
そして本格的に戦争が起きた・・・・・・』
その文はそこで終わっていた。
また、次のページをめくってみた。
『その人々に飽きれた光と闇の精霊は、憎しみを無くすために
精霊は、自らの手で人を殺さず、あるものを作り人を殺そうとしていた』
挿絵は光の精霊と闇の精霊らしきものが書かれていた。
さらに次のページをめくった。
『ドール。心を持たない人形を精霊達は作った。そして、そのドールは
人の形をしていて、人を憎めば殺戮の兵器と化してしまうというものだった』
「これが、ドール・・・・・・殺戮の、兵器・・・・・・・・」
外見は人だけれど、人じゃない・・・・・・
さっきの聞こえた言葉が本当なら、マイは人ではない。
「次は・・・・・・次のページが、ない・・・」
その次のページは破れていた。
その本は元々古いものなので、仕方のないことだがマイはもう少し見ていたかった。
「ドール・・・・・・ワタシがドールだったら・・・」
それからマイは、日に日に少しずつ、ドールとしての記憶を思い出していた。
なぜ自分はここにいるのかはわからないけれど、ドールと言うことは確かなんだと
マイはわかっていた・・・・・・
「辛かった・・・・・・ドールとして生まれてきたことを憎んだ・・・」
マイはじっと池を眺めていた。
「これが、運命・・・・・・?やっぱり、ドールは生きていてはいけないの・・・?」
次はマイが闇の精霊にドールの存在を認めてもらう番だった。
そのこともあり、マイは悩んでいた。
「ワタシには、仲間がいる・・・・・・だから、心配ない。よね・・・・・・」
ゲイザ、ミリア・・・・・・口には出さないけれど、大切な仲間だとは思っている。
そんなことを思いつつ、マイは立ち上がり宿屋に戻った。
そしてマイはドールがゲイザに災い・・・辛い想いをさせていることに気づき、
せめて、ゲイザには幸せでいて欲しい事を願ってゲイザを庇って死んでいった・・・
しかしマイは悔いはなかった。ドールでなく、本当の自分として死んでいけたから・・・
モドル
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