第[話「真実」
マイは宿屋の部屋の椅子に座っていた。
「嫌な予感が……」
そしてマイは外に出てみた。
外に出ると人がない。しかしどこかで大騒ぎしているようだ。
マイはその場所へ行ってみた。
「誰かが血まみれで倒れてるぞ!!」
「どいて! 通して!」
人ごみを掻き分けて見たものはゲイザの姿だった。
血まみれで倒れているゲイザ。
一緒にいるはずのミリアがいない。
「まさか、連れ去られた……?
誰か、誰かこの人を宿屋に運んでください!」
ゲイザは見ず知らずの人に手助けしてもらいマイは
宿屋に運ぶことに成功した。
「ワタシも使えるけど、ミリアさんほどではない――けど!
……癒しよ集え、ヒール! ヒール! ヒール!!」
マイはゲイザに何度も回復の術を唱えた。
「ワタシのせいで、ワタシが言いそびれなかったらこんなことには――」
「ん? ここ、は……うぅっ!」
ゲイザが目を覚ました。しかし傷が完璧に治っていない。
「よかった……目を覚ましましたか」
「マイ、俺……は?」
「大丈夫です、ゲイザさんは生きてます。私が回復の術をかけたので、少しは……」
「そうか……ぐっ」
ゲイザが立とうとするとマイがゲイザの体を押さえて寝かせた。
「そのままでいいです。一晩経たないと治りませんよ。」
「だが、俺は、ミリアを、守れ、な……かった」
ゲイザは悔しそうな顔をして目を瞑った。
マイは少々ためらってから真実を言うことを決意した。
「ゲイザさん、そのまま聞いててくださいね。これから真実を話します」
「真、実……?」
「そうです。ゲイザさん達が目指してきた、答えでもあります。ワタシのわかるのは少しだけですが」
少々会話に間が空いた。そしてゲイザはマイの目を見た。
「この世界には、こういう伝説があります。
『光を見る少女。闇を見る少女。そして、光と闇を持つ少年。
心は悲しみを生む。また心は憎しみを生む。
人は心無くして生きてはいけない。
心には消えない光があることを人は知っている。
また、消えない闇もあることも知っている。
今一度、光と闇が交えるとき世界は終焉に向かう。
光と闇の勇者、背中に翼を持つもの。
聖なる剣で世界を救う。』
光を見る少女。これはミリアさん――闇を見る少女。これはワタシです。
光と闇を持つ少年は、あなたです。ゲイザさん……
この文は何かしら、敵が企んでいる事でしょう。
そして、ワタシにわかるのはこれだけ。
光が何を表すのか、闇が何を表すのか――それはワタシ達の手で見つけるしかありません。
光……ミリアさんが失われた今、ゲイザさんに残されたのは闇のワタシ……
でも、闇のワタシはゲイザさんの心には受け入れられないのです。
闇、それは憎しみ、恐怖、絶望……だから、ミリアさんを助けにいかないとダメなのです。
ミリアさんをさらった敵は『今一度、光と闇が交えるとき世界は終焉に向かう。』
を実行しようとしていると思います。もちろん、ミリアさんの魔力を使って……
後一つわかることは、ワタシとミリアさんは人間ではない、ということです。
ワタシとミリアさんはドールという存在。肉体はただの器でしか過ぎません。
このペンダントにドールの魂が入っています。これを壊されてしまうと、
ワタシ達は人と同じく死ぬことになります。
ですが、ミリアさんは目覚めるのが遅れたため、すべてを思い出せてないのです。
自分が何者であるか。ペンダントの本当の力、そしてこの世界のことも。」
ゲイザは上を見ていた。何かを思いつめるかのように。
「ミリア……は、人じゃない、かもしれないけど……
人と変わらないはずだ――『心』は。だからマイも、ミリアも、俺が守る・・・
だから、大丈夫だ。ミリアも、助けるし・・・世界を終焉なんかにさせてたまるか・・・」
「そう、ですね」
気づくとゲイザは眠りについていた。まだ疲れが抜けていないからだろう。
「運命とは残酷ね……出会わなくていい彼と彼女を出会わせて、
それからワタシも出会わせて――それで、それで……心が、人の心が」
目に涙が溜まっている。久しぶりの感情だ。
「ドールは感情を持っちゃいけないの。でも人でありたいから
感情を持つ……それは人が不幸になるコト」
マイは静かに宿屋の部屋のベランダに出て、夜風を浴びながら泣いていた。
「ふぅ、よく寝たな……傷も治っている」
ゲイザはもうすでに普通に戦えるまでに回復していた。
だがマイは魔力を使い果たしてしまったせいか、まだ寝ている。
「マイは、このままにしておいてやるか。それにしても、いっぺんに
真実を聞かされたな。昨日は――ドール、それに光と闇……
まだ真相ではないけれど、近づいた気はする。ミリア、待っていろ。
俺がかならず、助ける」
そのとき、マイが目を覚ました。
「ん――ワタシ、寝てしまったの……?」
「おはよう、マイ。よく寝たか?今日はミリアを助けにいくからな」
「そうでしたね」
マイは薄っすらと微笑んだ。
ゲイザ達は、水の都ミネアを出て、敵の本拠地と思われる所
『グランシル』へ向かった。
(俺がこの後、どうすればいいか、それはミリアを助けてから決めるんだ)
そしてグランシルにたどり着いた。ネイホよりは栄えてるが、
一見そんなに他の国と変わったところは見られなく、平和な国だ。
「敵は恐らく、あの城にいるでしょう……いきますよ」
二人はグランシル城まで走っていった。
続く
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