第Z話「任務」


タクスはスレイドに闘技場で勝ってから宿屋に戻ってきた。
ネイアーは宿屋の部屋でタクスの帰りを待っていた。
「おまたせー」
タクスは部屋の扉を開けた瞬間、ネイアーはそれに気づきタクスに踏みよった。
「ちょ、ちょ、ちょっと、タクス! 何やってたの!?」
「いや、何って……闘技場で」
「だから、闘技場はいいの !見てこれ!」
タクスはネイアーに何かの紙を見せ付けられた。
よく読んでみると、『スレイド敗退!?タクス・カタスロフィ圧勝!!』
と書いてある。
「あぁ……これね。すごいでしょ? 何か勝てたんだ」
「何かって、これが街中で配られてるの。わかる?
ユ・ウ・メ・イ・ジ・ン!!」
何に怒っているのか、疑問だ。
ネイアーは怒ってタクスに背を向けた。
「何か困ることでもある?別にいいじゃんか、それくらい」
「まあ、確かに宿の主人の人に今晩はタダでいいなんていわれたり、
ギルドの人にいい仕事させてやるー、なんていわれたけど……」
「いいこと尽くめだね」
タクスは笑った。しかしネイアーは少々不機嫌だった。
「タクスばっかり有名人で、あたしの立場はー!?」
「えぇ……」
そんなことかい、とタクスは心の中で呟いた。

夜、タクスが宿屋のベッドに入ろうとしたときだ。
外から鳥が飛んできた。
「ん、鳥? 足に何かつけてる――手紙? どれどれ……」
手紙にはこう書いてあった。
『スレイドに勝ったお前と対決したい。今晩、闘技場で待ってる ガイ=イルス』
「なるほど……って、こんな夜遅くに? しかもアイツって
怪我してるんじゃ」
タクスが闘技場に行ったとき、スレイドにやられた少年を思い出した。
そのまま行かないのも可哀想なので
「しょうがない、行ってみるか」
タクスはこっそりネイアーにばれないように部屋を抜け出して闘技場へ
向かっていった。

闘技場はしまっていたので裏道をつかって闘技場の中へ向かった。
闘技場の戦いの場には今日スレイドと戦って負けたガイ=イルスが立っていた。
「良く来てくれた、タクス=カタスロフィ! 手紙を読んでくれたと思うが
スレイドと勝った君に戦いを申し入れたい。」
「えぇ!?あれはマグレで、偶然で……」
「問答無用!!」
ガイが腰に下げている短剣を鞘から抜くとタクスを目掛けて走ってきた。
「くらえっ、氷水刃!!」
水と氷の刃を交互に1回ずつ斬りつけたが、タクスは避けていた。
後ろに後退するとタクスも腰に下げている鞘から剣を抜いて構えた。
「そっちがやるっていうなら、こっちだって!」
「さすがスレイドに勝った男。やるな!」
二人は剣を構えて睨み合った。
そしてお互い一斉に剣を斬りつけた。
もちろん剣は鍔競り合い。
剣と短剣が交わる最中、ガイは呪文を唱えた。
「氷よ、アイスニードル!!」
氷柱がタクスの頬をかすめた。少しの血が流れる。
「くっ、鍔競り合い中に術が使えるなんて、なんて器用なヤツなんだ!」
そういわれたガイはニヤリと笑って見せた。
「剣と術を同時に使う。それが魔法剣士ってやつだからな」
少々得意げにガイが笑っていた隙に、タクスが剣を構える。
「やっぱり、力は力で抑えるしかないか!仕方ないな……」
「な、なに!?」
タクスは剣を地面に突き刺した。
「大地よ!」
地面が裂けてガイの地面から尖った岩の塊が突き出た。
「ぐぅ!」
「風よ!!」
竜巻を剣で起こして更に吹き飛ばす。
「雷よ!!」
落雷をガイに直撃するように剣を天に突き上げ、雷を落とした。
「これで最後だ!!焼き尽くせ!!」
剣に巨大な炎を纏わせその炎でガイを焼き払う。

「秘奥義、エレメンタルブレイカー!!」
「うぅ……」
ガイはその場に倒れた。
「ちょっとやり過ぎたかな? まぁ、いいか。眠いから帰るよ」
「ちょっと待ってくれ」
ガイがタクスの肩を掴んだ。
「オレも、タクスの仲間に入れてくれない?」
「なんで!?」
「オレは強くなりたい。だから、強い人についていきたい。それだけだよ」
「まあ、いいけど・・・・・・」
そしてタクスとガイは宿屋に戻った。

戻った頃には朝になっていて、ネイアーが起きて待っていた。
タクスは事情がはなすとネイアーは「旅は道ずれ」といって笑って終わった。
とりあえずタクス、ネイアー、ガイの3人はギルドへ向かった。
「おぉ、有名人!いい仕事が入ってるよ!」
「ユーメイジン・・・だって」
ガイが笑った。無理もない。この街中のほとんどの人から有名人と言われている。
「そ、それよりオーナー。いい仕事って?」
「ああ、そうだったな。こいつぁスゲーぞ! 何てったって、王様の依頼だからな」
タクス達はシーンと静まった、というかギルドにいるオーナー以外の人たちが静まった。
「どうだい、やってみるかい?」
「自身はないけど、やって見ます」
「じゃあ、とりあえず城へ行ってみろ。謁見受付の人に話し掛ければ王に会わせてくれるだろう。
これが城に入るための通行証だ」
タクスは通行証をオーナーから貰った。
「頑張ってこいよ」
オーナーからの見送りの言葉を受け取ってタクス達はギルドを出て城に向かった。
「それにしても、王様直々とはなんの依頼だろう?」
「さあ?強い人じゃないとダメっぽいね。それほどヤバイんだろうね」
「強い人、か」
タクスが真剣に悩んでいるところに城はもう目の前にあった。

「通行証を見せろ」
タクスは門兵に通行所を見せると兵は上に上がったレバーを下げた。
すると木の橋が城へと繋がった。
「通っていいぞ」
通行証を返してもらったタクス達は城の中へ入っていった。
「城ってこんな風になってるんだ〜」
ガイが回りを見回す。
「とりあえず謁見の受付をしないと……すみません、ギルドのものですが
王の依頼で来ました」
「少々お待ちください」
タクスが受付の人に話すとちょっと待たされて謁見が終わった人が出てきた。
「時間です、どうぞ王の間へ」
「いざとなると緊張するな……」
タクスは少々緊張しつつも王の間へ向かった。

王の間へ入ると王様と姫が座って待っていた。
「おぉ、そなた達がギルドの者か。よく来てくれた」
タクス達は頭を下げて礼をした。
「顔を上げろ。今回そなた達にやって欲しい任務は重要なことだ。よく聞け。
私の娘、アスザ姫を隣の王国ヘズリィまで護衛してやって欲しいのだ」
「私がアスザです。皆様、少しの間ですがよろしくお願いしますね」
「了解しました。それでは、俺・・・じゃなくて私たちは任務につきます」
ちょっとタクスは焦っていた。姫を護衛する、それはとてつもなく重大な任務だ。
姫にもしもの事があったら、死刑は免れないかもしれない・・・からだ。
「よし、任務頑張ってくれ、下がってよいぞ」
タクス達と姫は王の間を後にした。


続く

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