第W話『黒いペンダント』
「見つけたぞ……ミリアの前に、貴様の命から貰おう」
黒いコートの男がゲイザに近づいた。
「貴様ぁ……っ!」
ゲイザは剣を鞘から抜き、男を睨みつけた。
男はゲイザに近づいて片手を突き出すと宿屋の壁に飛ばして叩きつけた。
「ぐはぁっ!?」
「お前はまだまだオレには勝てないということだよ、くっくっく……」
「畜、生……ッ」
そのとき、ミリアが階段を駆けて下りてきた。
「ゲイザ!? ……あなたは、また! 何で私を狙うの!?」
「何故? それは――お前のペンダントがなければ俺の主人の計画を実行できない。
だから、お前を殺してペンダントを貰う……それだけだ」
男は魔法を唱え始めた。
それと同士にミリアも何か魔法を唱え始めた。
最初に唱え終わったのはミリアだった。
「私たちを、助けて!」
その瞬間、辺りが白い光に包まれてゲイザとミリアが消えた。
「ちっ、テレポートか・・・・・仕方ない、魔力を辿って追うしかない」
そういって男は消えていった。
一方ゲイザとミリアは一軒の家の前に気絶していた。
「誰、あなた達……」
一人の少女が、家から出てきてゲイザ達を見た。
「人――男の人と、女の人。それに、この女の人は……
とりあえず、家に運ぼう……」
そういって、少女は家に入って行った。
「ん――んんっ? ……ここは?」
ゲイザは目が覚め体を起こして辺りを見回した。
どうやらさっきいた宿屋とは違う場所らしい。
「やあ、気づいたかい? 剣士さん」
声のした方を見て見ると、ちょっとおじさんっぽい男の人がいた。
どうやら、この人が助けてくれたらしい。
「あ、すみません……でも、なんでここに?」
ゲイザの言葉に男はうーんと言って少し困っていた。
「なんでって……そりゃ、うちの前で倒れていたからだろ?」
男は苦笑して見せてミリアの方を見た。
「とりあえず無事でよかった。こっちの嬢ちゃんは、まだ起きねぇみたいだがな」
ゲイザもミリアの方を見て見た。
スヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。
宿屋であの騒ぎだったので寝れなかったのか、それともさっきの呪文で疲れてしまったのか。
どっちにしろ疲れていたのは確かだが。
「彼女は、すこしの間寝かせておいてくれませんか? 多分疲れているのでしょうから」
「ああ、そうらしいな。そういやあ自己紹介がまだだったな。
俺の名前はガラド=ゲラデク、お前さんは?」
「俺の名前はゲイザ=ライネックです」
そういったゲイザはベッドからでた。
「おいゲイザ。ここで話すのもなんだから、リビングで話すか」
「はい、そうですね」
二人は、ぐっすり寝ているミリアを置いてリビングへ向かった。
「あ……」
リビングでは一人の少女が立っていた。
ゲイザとガラドに気づくと歩いて外に出て行った。
「さっきの子、誰ですか?」
「ああ、マイっていってな。人見知りしてしまう子なんだよ。マイッタマイッタ」
ガラドは、ハッハッハと笑って外の方を見た。
それから二人は木の椅子にすわった。
「マイは、ガラドさんの子なんですか?」
「いや、拾い子だ。捨てられてたのさ、森に――」
「へえ、俺と似てる」
ぼそりとゲイザは呟いたのをガラドは見逃してなかった。
「お前は、マイみたいに捨て子だったのか?」
「あ、はい……そんなようなもんです。何も覚えてないんですよ、
親の顔も。だから、たまに思うんです。俺は何者だろうって」
「へぇ……んで、なんでお前さんは旅をしてるんだ?」
「さっき話した、俺は何者なんだろうって――その答えを探す旅に。
ミリア……俺と一緒に倒れてた子も同じです。答えを探すための旅をしてるわけです」
頷いて聞いていたガラドは、一瞬外を見て、再びゲイザの方を見た。
「じゃあ、すまねえがマイも連れて行ってやってくれないかい?
ここにいるよりお前さん達と一緒にいた方がマイ自身のためでもあるし、な。
マイには俺がいっておいてやるからよ」
「わ、わかりました……」
そういうとガラドは立ち上がって外に出て行った。
ふと気づくとミリアが起きてゲイザの方を見ていた。
「おはよう。あれ――ここは……どこ?」
「ここはガラドさんの家だ。倒れていた俺たちを助けてくれていたらしい。
それで、マイって子がいるらしいんだけど、俺たちの旅に連れて行ってやってくれって……」
「なんで、その子も一緒に?」
ゲイザは少しためらったが、再び話し始めた。
「あ、ああ……あの子も、俺たちと同じ。何者かわからない人だ。
ガラドさんが偶然森で拾って育てたけど、何者かもわからない。だからその子のためにも
一緒にいてやってくれって」
「ふぅん、わかった。ゲイザがいいって思うんなら、私は構わないから」
そのとき、勢いよく扉を開けてガラドが入ってきた。
なにやらものすごく焦っているらしい。
「あ、あのよ! マイがいなくなっちまったんだ! 多分森の奥に入っていっちまったんだと思う!
それに、最近はモンスターが活発化して危ないって言われるんだ!」
「俺が探しにいく!」
「私も……――っ!?」
ミリアがいきなり床に倒れてしまった。
「何言ってるんだ! お前はまだ体力が完全に回復てない。ガラドさんの家にいろ、わかったな?」
「うん……わかった。」
しぶしぶミリアはそう返事すると、
ゲイザはミリアを立たせてあげるとミリアはベッドへと戻っていった。
「頼んだぜ、ゲイザ。ミリアちゃんはちゃんと俺が見ておいてやるよ。
よろしくな!」
そしてゲイザはガラドの家を出て森の奥へと向かった。
そこの森は外見は普通の森と変わらないが、モンスター達の声が微かに聞こえてくる。
それに、なんだか危なさそうな雰囲気だ。
「マイって女の子、どこいっちゃったんだ――ん? これは何だ?
なんかの……飾り?」
ペンダントらしきものが道に落ちていた。多分マイが首にかけていたペンダントだろう。
黒い宝石の周りに羽がついている。ミリアのつけているペンダントと同じ形をしていた。
「ってことは、この近くにいるってことか……?」
近くに森の出口らしきところがあった。
ゲイザはその先へ行ってみることにした。
そこにいたのはマイだった。
「――ワタシね、不思議な人を見たの。男の人なのよ……
何でも信じそうな心をもって、それに強いのよ――心が」
誰かと話しているようだ。しかし誰と?
疑問に思ったゲイザはそのまま見ていることにした。
「ワタシ、旅立つわ。あの人達と一緒に。『答え』、見つけられそうだから。
それに、あの子――ワタシと同じね。ドール……そう」
ゲイザには聞こえなかった。最後の言葉が。
そのとき、マイの近くにあった木が一歩動いた。
(木が動いた……まさか、モンスター!!)
そう思ったゲイザは木の陰から出ていった。
「君、危ない!! 下がれッ!!」
ゲイザは剣を鞘から抜いて両手で持った。
そして、その木に斬りつけた。
「グォワーーー!!」
その木は化け物と変わり、ゲイザを攻撃し始めた。
「くっ、やっぱり! コイツはトレントか!」
「――えい!」
どこからかカードが飛んできてトレントを斬りつけると消えていった。
後ろを振り向いて見るとマイがカードを3枚ほど持っていた。
それに手首にはカードを勢いよく飛ばすためにあるカードシューターがついていた。
「ワタシだって……戦えるのよ」
「わかった、手伝ってくれ。後ろの方から援護してくれるだけで構わない。
いいな? 行くぞっ!!」
ゲイザは風を使い、跳躍をして落下すると共にトレントに剣を斬りつけた。
そのとき、岩がトレントの上から出てきて、押しつぶした。
(こいつ、強力な魔術が使えるのか……!?ミリアと同じ――じゃあ、このペンダントは)
「マイ、受け取れ!!」
そう思ったゲイザはマイにさっき拾ったペンダントを投げつけた。
それをマイは首にさげた瞬間、そのペンダントは黒い光を放った。
「ありがとう、ゲイザさん」
薄っすらと微笑むとカードを片手で持って上げ、精神を集中した。
「我に力を……爆炎の輝き、大地の怒り、新たなる輝きよ!
インフィニティフォールっ!」
大きな爆発がトレントを飲み込み、消滅した。
(彼女は、ミリアと同じ……何故だ。それに、この魔力。人並以上のパワーだ)
マイはゲイザの方を見て、「先に戻ってる」と小さい声で言ったら消えてしまった。
多分ガラドの家に戻ったのだろう。
ゲイザは考えるのをやめ、ガラドの家に戻ることにした。
続く
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