エピローグ


悲しみの決戦を終えて、数日後。
冬という季節を終え、春という季節を迎えようとしていたそんなとき、
戦いを終えた彼らは、それぞれ違う道を歩んでいた。
ルアグ博士の研究室に、話をするルアグ博士とレン。
そして転送機械にレンは入っていた。
「本当に旅に出るんじゃな、グラディームに」
「……ああ。違う世界を、じっくりこの目で見て来たいからな」
そんなレンの言葉に、ルアグ博士は笑っていた。
「若いのはよいのぉ……あっちへ行って、お主は何をするつもりじゃ?」
「自由気ままに旅をする。困っている人がいたら助ける……それだけだ」
レンはそういうと、少し笑った。
「さ、転送を開始してくれ」
「よし、転送開始するぞい」
ルアグ博士が転送機の横についているレバーを上から下へ倒すと、一瞬のうちに光に包ま
れて、その中にいたレンは消えてしまった。

そうしてレンは、自分を見つめ直す旅に出た。
あの時、どうしていれば自分の大切な人を助けれるか。
そんなことを思ったが、それはもう過ぎてしまったことだった。
彼もまた、失う辛さを業〔ごう〕として背負い、旅を続けることにしたのだ。


朝。
「兄さん!! ほら、早く起きてください!!」
「うぅん……」
エーレの起こす声から逃れるように、サイグは毛布を自分の上へとかぶせた。
「傭兵の初依頼者が来てるんですよ!!」
「え……? う、うぅ……今、起きる」
言葉ではそういっても、体はピクリとも動いていなかった。
「おーきーなーいーとぉー……」
怒りに満ちたその声は、家の外にいた依頼主の耳にも届いていた。
その瞬間、ゴツンと大きい音が家中に響いた。
「いっつー!!」
頭を抑えてベッドから飛び起きたサイグ。
エーレの拳骨を、頭のてっぺんに叩きつけられたのだ。
「兄さん、依頼主さんが来てるんですけど?」
眉間にしわを寄せて、眉をピクピクと上に吊り上げるエーレ。
そんなエーレの怖さに、サイグは度々脅かされている。

サイグはマルディアグに戻ってきてからは、人のために何かしたいということで自らの剣
の腕を利用して金も稼げる傭兵という仕事を始めた。
もちろん、エーレは家の火事などを中心に行っているだけだが。
ショーンル見たいな、不幸な人がいなくなるようにと、サイグは日々努力することを決め
たのだった……


……………

セントグラームの町外れ。
そこには小さい家が一軒建っていた。
その外には、小さい妖精が二匹。
性格には、妖精型ホムンクルスが二人。
ラティーは木の枝の葉についている水滴を触って遊んでいた。
「ラティーさん、遊んでていいんですかー?」
そんなルミィーの言葉を聞いて、ラティーはすぐに否定をした。
「わ、私は遊んでるわけじゃないですの!!」
「どう見たって、遊んでるですー」
「うるさいですのー!!」
そんなうるさい声を聞きつけたのか、一人の男の人が歩いて近づいてきた。
「おいおい、何やってるんだ、お前ら……ちゃんと家に居ろって言ったろ?」
「あ、ゲイザさん」
そんな反応をしたラティーに、ゲイザはため息をついた。
「ま、外で遊びたい気持ちはわかるから許すとしよう。中に居ても退屈なだけだろうし」
「ふぅ……よかったですの……」
安心してラティーはふいにため息をついてしまった。
その様子を見ていた女の人が、クスクスと笑いながら近づいてきた。
「ゲイザ、何やってるの?」
「イルア!? あー、いや……これは、その」
「今日の買出し、お願いね。ラティーとルミィーも一緒に行って来て」
イルアは買うものを書いた紙と金をゲイザに渡すと、小さな家へと戻っていった。
すっかり母親のようになってしまっているイルアを見て、ゲイザは少し笑った。
「ふぅ……さてと――二人とも、行こうか」
「はいですの!」
「はいですー」
そしてゲイザ、ラティー、ルミィーはイルアに頼まれたものを買いに、セントグラームへ
と向かった。

あの決戦から一日たち、ゲイザとイルアは無事マルディアグで発見された。
元々アラグダズガが使う予定だった脱出ポットを使い、無事に戻ってきたのである。
そして、あの場所で約束したとおり、ゲイザとイルアは一緒にいることに決めた。
やっと悲しみの戦いに踊らされていた彼らにも、平和な日々が与えられたのだった……


光の心――それは優しさの心。
闇の心――それは憎しみの心。
心は、人に必ずあるもの。
だから、忘れないで……闇に溺れないで、光を大切にすることを。
きっと苦しいことだってある。きっと悲しいことだってある。
生きていれば、必ずそういうことがあるはずだから。
そんなときには、憎しみの感情、悲しみの感情、怒りの感情だけで動かないで。
その心で、人を傷つけないで。
光の心を持ち続ける……それは大変なことかもしれないけれど。
人が人であるために……優しい心を忘れないで。
その心だけで、沢山の人が救われるのを忘れないで。

――マインドオブライト〔光の心〕は、あなたの心に永遠にあるものだから――

THE END

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