第\話 『仲間との絆』
「起きるですの! 朝ですのー!!」
「ん、んん……」
明るい日差しを浴びながら、ラティーの声でイルアはベッドから起き上がった。
まだ少し眠い気持ちがあるけれど、すぐさま気持ちを切り替えた。
「ラティー、おはよう」
「おはようですの♪」
二人とも笑い合って挨拶をする。と、扉をノックする音が聞こえた。
「イルアさん、ラティー。起きてる?」
「早くしろー、オレは腹ペコだー!」
「キシュガル、朝ご飯抜きにするよ?」
「そ、それだけは勘弁……」
扉の外から聞こえる声はリュアとキシュガルのものだった。
すぐさまイルアは荷物をまとめて持つと扉を開けた。
「じゃ、イルアさんとラティーも揃った事だし、どっかで朝ご飯を済ませてから風魔の谷へ
向かいましょう」
「そうそう。腹がへっては戦は出来ぬ! っていうしな」
とても腹を空かしているキシュガルは人差し指を上に上げて言った。
確かにそのことわざの言う通りだろう。
四人は宿屋を出ると店でパンを買って食べ歩きながら風魔の谷へ向かった……
レンの姉ルディアと戦って負傷したレンは意識を取り戻し、とりあえず風の当たらない
近くの遺跡の中へと入っていた。
「ありがとう……マイのおかげで大分楽になった」
『いいえ、癒しの術くらいは使えますから』
一晩経って、ルディアに斬られた腹の傷はすっかり消えていた。
黒い宝石の力――マイの治癒術で傷は消えたのだ。
目を閉じたまま、レンは口を開いてマイに話しかけた。
「闇って、いいものなのか?」
―あなたも闇の世界へ来ればわかるわ。闇の心地よさが―
この言葉がさっきからレンの頭をちらつく。
『闇は……楽なんですけど、孤独、ですよ』
「孤独……?」
マイが口にした言葉は、いい意味ではなくて、悪い意味の闇だった。
少し寂しそうな感じの声だった。
『ワタシもかつて闇に身を預けていました。確かに、楽です……けれど、闇の道へ行くと
それは周りの人々を否定して生きなければいけない――だから孤独なんです』
闇のことはマイもよくわかっていた。彼女自身が闇だったから。
『私はかつて『闇のドール』として生きていました……かつて話しましたよね』
レンが初めてマイという名を聞いたとき、一緒に話してくれたはずだ。
ドール……愚かな人々を殺すための殺戮兵器、と――
『闇があるように、ドールにも光があります。ミリアさんは光のドールです』
イルアがつけていたペンダント。そこから聞こえた声はミリア=ビリアムズという名前。
マイも元々ミリアと同じペンダントだったのだろうか。
『闇に心を囚われていたワタシを、光に少しだけ導いてくれた人がゲイザさんです』
「あの、世界を救う鍵といわれたゲイザ=ライネック……?」
『はい。彼は生きる希望を失いかけたワタシに光を与えてくれました。彼のために生きて
死ぬ、という……生きる希望を』
「そうか……」
風が遺跡の中を通り抜けた。
イルア達は村を出て北東にある山にある風魔の谷へ来ていた。
人間が四人横に並んで通れるくらいの道幅で谷の底は暗くて見えないくらい高かった。
「おー、ここが風魔の谷かぁ〜……落ちたら死にそー」
「落としちゃうよ?」
「いや、それはタンマ……!」
イルアとラティーの二人で旅をしているときよりも、賑やかに見える。
常にキシュガルとリュアが二人で漫才のように話している。
(私も、ゲイザとこんな風に話したいな……なーんて)
その光景をみてイルアはそう思い、今ここにはいないゲイザに微笑みかけてみた。
けれど、その微笑は届くはずもなく、少し寂しいという気持ちだけが残ってしまった。
「イルアさん、イルアさん。今回は谷を登って行けば精霊さんに会えるようですの」
「そうみたいね……でも、ちょっと洞窟のほうが楽かな?」
確かに長い洞窟を歩くのと長い道のりを登るのじゃ使う体力の量が大分違う。
もちろん、登るほうが体力を使うわけで。
『おうおう、シルフィーラの嬢ちゃんに会いに行くのか』
小刀がいきなり光りだした。そして聞こえてきた声の主は先日契約した地の精霊ノルスの
声だった。
『シルフィーラとの戦闘のときは手伝ってやるぜ』
「そうですのそうですの! 風は地に弱いんでしたよね、確か」
ノルスの言葉にラティーは属性の定理を思い出した。
水は雷に弱い、地は水に弱い、風は地に弱い、という風に魔法などにも弱点がある。
マルディアグもグラディームと共通していて物には属性がついている。
木々や草花、地面、建物、水などの自然のものから剣や防具、人にも属性がある。
人の場合は血や生まれた環境によって生まれたときにつく属性が人によって違う。
なので人にも得意とする魔法や苦手、弱点とする魔法などがあるということだ。
「属性の定理は、とても大切なものなんですの♪」
「初めて知ったわ……」
「えぇ!? そ、そうなんですの? じゃあこの機に全て覚えて――」
そんなイルアとラティーのやり取りをよそに、キシュガルとリュアは二人でどんどん先へ
登っていっている。
「おーい、イルア、ラティー!! おせぇぞー!!」
イルアとラティーはキシュガルの声がする方を見てみると、そこはもう頂上だった。
石段があって、いかにもそれっぽい場所だ。
それを確認するとイルアとラティーは急いで頂上を目指した。
「こ、ここが頂上?」
走って登ったためか、イルアは息切れをしていた。呼吸を整えるために深呼吸をしてみると
高い場所にいるせいか、少しだけ息苦しく感じたけれど空気は綺麗だ。
周りを見渡すと地の精霊ノルスの時と同じように祭壇がある。というか頂上はさっき登って
来た坂に比べると平地でとても歩きやすい。崖から落ちないように柵もはってある。
『おい、シルフィーラ!! 出てきやがれ!』
いきなりイルアの腰にある小刀が光りだして喋る。
それを見たキシュガルとリュアは驚いて言葉を失くしたままその光景を見ていた。
「なんだよー、うるさいなー」
その声と共に祭壇に光が集まり、そして人の姿をしたものが出てくる。
黄緑色の短髪で、弓矢を持った少女が現れた。
「ボクが風の精霊シルフィーラだよ」
ウインクをしてピースをしている。まるで子供のような性格だ。
背もウィルティーやノルスと比べて低い。
「か、可愛い……」
「なんか言ったですの?」
「ななな、何でも!」
イルアは顔を赤らめて少し聞かれてしまったラティーとは違う方向を見た。
「へぇ〜……ウィルティー姉さまとノルスのおじさんの二人と契約したんだ……やるね」
少しニヤついた顔でイルア達を見る。そして小刀に視線を移す。
「風の精霊シルフィーラ、私はあなたとの契約を望みます」
イルアは少しシルフィーラに近づいてみた。右手は左の腰にある剣に柄をすでに握っていた。
「ボク、話がわかる人って好きだよ♪ それじゃ、戦おっか!」
シルフィーラが弓を片手に、矢をもう片手に持ちイルアに標準を合わせる。
すぐにイルアも剣を鞘から抜き、戦う準備をする。
「ツイスターアロー!!」
風を纏った矢をイルアに向けて弓で放つ! その矢は凄まじいスピードで、それでいて
まっすぐにイルアを目掛けて向かってくる。多分風を纏っているので風や空気による
抵抗が少なくなり、矢の早さや正確さを保っているのだろう。
「ノルス、私に力を貸して!!」
『おう! まかせろっ』
「地の岩よ、我を守りし盾となれ……ロックウォールッ!!」
イルアの目の前に矢がある間一髪のところで岩で出来た厚い壁が現れる。
そして矢はそれに突き刺さり、イルアはその攻撃を受けずにすんだ。
「もう精霊の力を使いこなしているなんて……やるね、お姉ちゃん!」
再び弓を構え、矢を射る。そしてまた、イルアの方へ矢が向かう。
「避けれない……!?」
「イルアさんっ!!」
ラティーが叫ぶ。イルアは剣を構えたまま、その場で立っていただけだった。
恐怖が体の自由を奪ってしまったのだ。
そして、すぐ近くにもう矢はあった。
「サイクロン、ディフェンサァァー!!」
まさに間一髪ともいえる瞬間。
イルアの目の前にキシュガルが現れ槍を回してその矢を弾き返した。
「群青の守護神こと、キシュガル=ランフォードにおっまかせ!! なーんてな」
「なんだかよくわからないけど、一緒に戦おうよ!! イルアさん」
キシュガルの横にはヌンチャクを構えたリュアが。イルアを庇うように目の前に立っていた。
「みんなで戦えば、怖いものなしですの!!」
危険のない空でパタパタと飛んでいるラティーが応援のエールを送る。
「そうね……あなた達二人は前に出て戦って! 私は後ろから魔法で攻撃するから」
「オッケー!!」
「うんっ!!」
イルアの指示にキシュガル、リュアの順に返事をし、イルアはその場で曲刀を鞘にしまい、
小刀を取り出して詠唱を。キシュガルとリュアはそれぞれ武器を構えシルフィーラへ向かって
走り出した。
続く……
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