第W][話 『宇宙に広がる星』


ゲイザとルミィーをアラグダズガの元へと残してきたイルアたち。
イルアたちは要塞付近に止めておいたフォーグライクスの中へと乗り込んでいた。
「……………」
「イルアさん、元気出してくださいですの……」
さっきから、この調子で他の誰とも口を聞かない状態でイルアは顔を俯きながら座席に座
っていた。
「イルア。気持ちはわかるが、今は戻って得策を考えるんだ……俺達――イルアも傷を負
っているだろう? だから、ここはアイツの言うとおりでいいんだ」
アイツ――ゲイザはイルアたちの様子を影から見ていて、危ない状況になったので出てき
たのかもしれない。そして、勝ち目のないイルアたちを逃がしてくれた。
レンは全てわかっていた。
「ルディフ、一旦戻ってくれないか?」
「わかったよ……!」
再びフォーグライクスは空を上がり、宇宙へと出た。

悲しい気持ちで見る宇宙は、何処となく不安な気持ちにもさせられた。
星が常に輝き、果てしなく広い空間。
しかし、逆に果てしないから、終わりがない。そんな感じだ。
「イルアちゃん、見て見て!! ほら、あの綺麗な星!」
隣の座席に座っているエーレが、窓を見ているイルアを呼んだ。
エーレが指差した窓の外には、青い星が二つ。
「どっちが私達の住んでる星なんだろうね?」
「大きい方がマルディアグ。小さい方がグラディームだ」
エーレはイルアに聞いたが、代わりにレンが答えた。
確かに、青い綺麗な星が二つあるが、少しだけ大きさが違う。
初めて見る自分の住んでいる星に、イルアは少し感動していた。
「すごいな、こりゃ……」
サイグも、
「すごいですの、すごいですの!」
ラティーも、
「ボクたちの星って、こういう風になってるんだ……」
ルディフも、みんなその綺麗な星を見て感動していた。
「こんな綺麗な星を、アラグダズガは消そうとしてる……」
イルアはそう呟いた。
そんなことをさせない為にも、止めなければいけない。
野望を阻止しなければいけない。
けれど、今の自分では力不足。
それが目の前に突きつけられた事実だった……
また行っても、やられてしまうのが落ちかもしれない。
不安になったイルアは、レンに聞いてみることにした。
「ねえ、レン」
「どうした?」
「どうやったら、アラグダズガに勝てるの?」
それを聞いたレンは、少し笑って見せた。
「頭を使えば、大丈夫だ……それと、強い心」
「強い、心?」
「そう、強い心……助けられたんだろう? そして、教えられたんだろう? 彼女に――
ミリア=ビリアムズに……」
今、ここにいれるのはミリアがいたからかもしれない。
ここまで挫けないでこれたのは、きっと彼女が支えていてくれたから。
今思い返してみると、確かに教えられていた気がした。
強い心を……
「後ろから何かが近づいてくるぞ!」
いきなりサイグが後ろを見ながら叫んだ。
全員後ろを振り返ってみると、そこには隕石が青い星へと向かっているのがわかった。
ルディフは操縦をオートにしてフォーグライクスの後ろの方にある窓のほうへ歩み寄った。
「この軌道上は……グラディームにあの隕石は落ちる! しかも、この間マルディアグに
落ちたモノと全く同じだ!」
「魔物を産む石――なんとか出来ないのか!!」
レンはルディフに向かって叫んだ。
大切なもの――マイを失って、やっと破壊できた隕石が、再び……今度はグラディームに
落ちようとしている。
「この飛行船には一応魔法機関銃がついてるが……やってみる!!」
再びルディフは操縦席に戻り、フォーグライクスをその隕石の方へと方向転換した。
「チャージ開始……発射!!」
いくつもの魔法弾はルディフの腕のおかげで隕石に命中した。
隕石は破壊され、バラバラに砕け散った。
「ふぅ……間一髪だったね」
ルディフはため息をついて、額についた汗を拭った。
これで危機は免れたが、またいつ隕石が投下されるかわからない。
「早くルアグ博士の元へ戻ろう……そして考えるんだ。やつに勝つ方法を」
そしてイルアたちはフォーグライクスを再びマルディアグへと向かわせ、
ルアグ博士のいる研究所へと戻っていった。


続く……

FC2 キャッシング 無料ホームページ ブログ blog