第W]T話 『終末へ近づく星』
フォーグライクスの入り口ハッチが開くと、イルアとラティーは中に乗り込んできた。
「ただいまー」
「ただいまですの〜♪」
戻るとすぐに、座席に座りシートベルトをつけた。
眠たそうなレンが、イルアの方を見た。
「もう用はすんだのか?」
「うん、終わったよ……次はどうしよっか?」
「あ、それだけどね」
と、イルアとレンの会話にいきなりルディフが割り込んできた。
「一旦マルディアグに戻りたいんですよ。ルアグ博士から戻って来いと連絡が来たんで」
「れ、連絡ですか?こんなに離れているのに?」
イルアはフォーグライクスの中を見渡してみたが、それらしきものが見当たらなかった。
「これです。このランプが付いたら戻って来いという証拠です」
確かに操縦席の上にある、赤いランプが付いている。
それが戻って来いという証拠らしい。
納得したレンは、腕を組みながら頷いていた。
「なるほど……それじゃ、一旦マルディアグのルアグ博士の元へと戻るのか」
「精霊集めは、それからですの!」
「それじゃ、転送するから振動に耐えてね――転送、三秒前。二、一……転送開始!」
フォーグライクスの中が白い光に包まれて、自分たちの意識が遠ざかっていった……
「――んっ……マルディアグに戻ってきたのね」
意識が戻ったイルアは、それを確認するために座席のシートベルトを外し、立ち上がり窓
から外を眺めてみた。
「……………マルディアグみたい。だけど空にあるあれは何?」
イルアは空に、目でも確認できるくらいの大きな星があることに気づいた。
それはなんなのかわからないけれど、とても嫌な予感がする。
「邪気が感じられる……あのとき落ちてきた隕石と同じものだ」
「あれは、やばいねぇ……世界の危機、だね」
いつの間にか意識を取り戻していたレンとルディフも窓から空を見上げていた。
「ルアグ博士がボクたちを呼んだのは、これのことだね……とりあえず詳しい話を聞きに
行こうか」
ルディフは再び操縦席に戻り、フォーグライクスをルアグ博士のいるレスコォールへと向
かわせた。
「おぉ、呼び出し用ランプは無事についていたか」
ルアグ博士が望遠鏡で星を眺めていたとき、イルアたちは研究室に入ってきた。
すぐにイルアがあれについて話を切り出した。
「ルアグ博士、あの星はなんですか?」
「あれこそ、世界の危機じゃの」
「世界の、危機?」
片手に持っていた望遠鏡を、ルアグ博士は机の上において顎の伸びたひげを触りだした。
「三つ目の世界じゃ。魔物の住む世界……あれこそが敵の星じゃの」
「あの星の王が、アラグダズガ……」
今まであったことを思い出しつつ、イルアはその星と敵との関連を結び付けていた。
あの星の王がアラグダズガで、マルディアグを征服しようとしていた。
その目的は?
「あの星が発見されたのは一週間前で、はっきり確認が出来るようになったのはついさっ
きじゃ。ということは――」
ルアグ博士の言葉に、いつもより冷静になったルディフが割り込んで話した。
「こちらの星に徐々に接近してきている。そして衝突しかねない……あの星がこの距離で
この大きさだから、確実にマルディアグがその星と衝突してしまったら……一瞬で消滅し
てしまう、というわけだ」
「本当に、世界の危機だな……」
レンは危機感を感じているのか、歯を噛み締めて拳を握り締めていた。
それを聞いたイルアも、つい大きい声で聞いてしまった。
「どうやったら、あれを止められるんですか!?」
「あの星へ行き、星を動かしている動力源を破壊する……しかし、人の手では破壊はでき
ない。そこで精霊の力を借りて破壊するんじゃ」
今、ミリアが精霊を集めろと言った言葉の意味が、世界の危機と共通した。
なぜ彼女はこんな事態になることを知っていたのだろう?
しかしそんなことを思っても、彼女はもう答えてくれない。
光の記憶を全て見せたから。
「まだ精霊は全部集まってないんじゃろう? ならば早くフォーグライクスへ乗り込んで
残りの精霊と契約してくるんじゃ。これでも一刻を争う自体なのじゃぞ?」
「ルアグ博士〜、残り二つの精霊なんですけど、理と、後一つなんですか?」
先ほどフォーグライクスの中で話していた疑問を、ラティーはルアグ博士に質問してみた。
確かに、地図には理の精霊のことし書かれていなかった。
それに残りの精霊は残り一つではなく二つだ。
「ああ、そのことじゃの……マルディアグにも、グラディームにもいない精霊……時の狭
間にいる、時を操る精霊、時の精霊テュアルグじゃ。それは理の精霊と契約してきたら話
してやるから心配せずにグラディームに戻って契約して来るのじゃ」
「はい!」
「はいですの!
イルアとラティーの返事が返ると同時に、イルアたちは研究室を出てすぐにフォーグライ
クスの中へと乗り込んでいった。
ついに現れた世界の危機。
その真相と、結末は……
続く……
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