第V]\話 『闇のあるべき姿』
光の精霊と契約を済ませたイルアは真聖の神殿から出てフォーグライクスへと向かった。
「ただいまー」
「おかえりですの! イルアさん!」
フォーグライクスのハッチから入ってきたイルアは、そのまま座席に座った。
そしてふぅ、とため息をついた。
そんなイルアに、ルディフはコーヒーを渡してあげた。
「無事、契約出来たのかな?」
「はい。ちゃんとできましたよ……けど、なんでコーヒーが作れるんですか?」
と、コーヒーを飲みながら聞いてみた。
「ああ、作れるような設備を設置したからね。うん」
なんでそんなことをしたんだ、とルディフ意外の全員が思ったが、レンが話しを切り出し
ていった。
「イルア、次の目的地はどこだ?」
「今度は……ここだね」
地図を広げて、指をさしたところにあったのは刹那の洞窟。
「闇の精霊か……? 先ほどのことを考えると、今度は闇の壁が貼ってあるな」
「じゃあ、今度は誰がいくんですの?」
戻ってきたイルアの方に座ったラティーがレンに聞いた。
「今度は俺らしいな。ルディフ、そこまで頼む」
「OK〜」
そしてフォーグライクスは刹那の洞窟へと向かった。
フォーグライクスは刹那の洞窟付近に置き、レン一人で刹那の洞窟へと向かった。
「ここか、刹那の洞窟は……闇の波動を感じる」
入り口だと思われる洞窟の穴からは、邪気にも似た闇の力が感じられる。
洞窟の中へ入ってみると、辺りはとても暗く、やっと目が慣れてもそんなに明るくは感じ
られなかった。
「魔物の気配はしない……どうやら一本通行のようだな」
レンはそのまま洞窟の奥を目指した。
奥の行き止まりの部屋は、いつもの通り祭壇が中央にあった。
祭壇の上に光が集まり、やがてそれは人の形となった。
他の精霊とは違って、とても闇を形にした精霊だった。
「我ガ名はディアライガ……何者ダ。キサマ、何ヲしにきタ」
髪は無造作に長く乱れていて、紫色。目の色は赤。口からは牙が出ている。
闇、悪を象徴した姿なのだろうか。
「俺の名前はレン=ディグファズ。イルア=ディアーグの代理で、契約をしに来た者だ」
「契約、ダト?」
ディアライガは目を細めてレンを見た。
何か悪いことでも言ったのか、少し不安になったがそんなことではないようだった。
「アノドールハ消えたノカ?」
「マイのことか?……彼女は、最後に人のために、消えていった」
「ソウカ……」
なぜそんなことを聞くのだろう?
そんなことをレンは思ったが、すぐにディアライガは何処からか鎌を取り出した。
「契約シタイナラ、戦え!」
「やはり、そう来るか……ならば!」
レンは剣を鞘から取り出し、ディアライガを睨んだ。
「ソノ剣、ドールノ力ヲ感じる」
「何……?」
剣を見てみた。すると、微かに黒い宝石の欠片が付いていたのだ。
しかし闇の邪気を感じられない。
「ソノ剣で、オレヲ倒してミロ」
「ああ、わかった」
再び剣を構えると、剣から微かに闇の力を感じることが出来た。
「マイの力、なのか……?」
「クラエ!! デス・スラッシュ!!」
ディアライガの鎌が、レンを目掛けて飛んできた。
とても早い速さで、空を切る音が聞こえる。
「くっ!?」
剣でそれを弾き返したが、その反動で剣を持つ手が痺れた。
「つぅ……まだ! マイ、俺に力を!」
剣が、闇に包まれたが、邪気は感じられなかった。
まるで、マイのようだ……
「邪気がナイ闇トハ、珍しいナ」
「これは、マイの心だ――」
「ナニ?」
「マイは、闇のドールとして、闇の心を持っていた。だけど、その闇の中にもある光を彼
女は知っていたから、邪気がない心を持つことが出来ていたんだ!! ――秘奥義!!」
秘奥義という言葉を聞いた瞬間、ディオライガの目の前にレンの姿はいなかった。
そして、気配を感じ取ったときには、体が斬りぎさまれるように斬られていた。
「漆黒、斬滅撃……刹那の時をかいま見ろ!!!」
その言葉と共に、ディオライガの体に無数の斬り傷がついた。
「契約シテやろう……」
「闇の精霊ディオライガ――契約、させてもらう」
レンはイルアから預かった小刀を腰の小さな鞘から取り出すと、ディオライガの胸に突き
刺した。するとディオライガは光になって、消えてしまった。
「ふう……マイのこと、思い出したなくなかったがな」
剣を眺めると、やっぱり黒い宝石の小さな欠片が付いていた。
どうしても、払い落としたくない。
そんな気持ちだった。
「闇にも、光がある……マイは、俺にそれを気づかせてくれた」
そのまま剣を鞘に収めると、目を閉じてマイのことを思い出してみた。
悲しそうな瞳をした少女。どこか、寂しげな雰囲気な少女。
けれど、闇のあるべき姿を知っている。
それくらい、悲しい過去を辿って来たのだろう。
ドールであるという、運命を……
「彼女が選んだ道には、間違いはない……そうだろ、マイ。俺は、ルディアにそれを伝え
なきゃいけないんだ」
レンはそう言って刹那の洞窟を抜けてフォーグライクスへと戻った。
続く……
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