第V]W話 『闇の試練』
地下牢に囚われている人々をエーレとラティーに任せ、イルアとサイグはそれを行ったと
思える人がいる王の間へと急いだ。
それを感じ取った一人の女剣士は、少し微笑んで王の間へと続く階段を眺めた。
「あら、さっそく来たみたいね……おチビちゃん、あなたは――」
「もちろん僕はサイグをやらせてもらうよ」
円満の笑みで、ショーンルは答えた。
「あらそう……それじゃ都合がいいわ」
そういってルディアは鞘から剣を抜き取り、片手に持つと再び階段を見つめた。
二人が戦いの準備をしている間、グライアは少し困惑していた。
なぜ戦わないでその場に立っていろと言われたのか。
「ルディア、俺は……」
「あなたは何があってもそこから動いちゃだめよ」
とりあえず、グライアはルディアの言うとおりその場に立っていることにした。
もちろん、監視役であるルミィーもグライアと共に待機していた。
「乙女心です〜♪」
「お前、まだ言っているのか……」
そんな話をしているうちに、イルアとサイグが階段をのぼってこの王の間へと向かって来
たことを、全員感じ取った。
「来たみたいね」
やはり階段をのぼってやって来たのはイルアとサイグだった。
「っ、はぁ――やっぱり、あなた達が」
走ってきたためか、イルアは息切れをしながら一人、予想通りグライアがその場にいた。
「イルア=ディアーグ。あなたは私が相手をするわ。グライアに会いたかったら、私を倒
すことね……」
「あなたは、レンのお姉さん!!」
「覚悟っ!!」
ルディアは剣を構え、まだ武器を構えていないイルアへと攻撃を仕掛けた。
「お前は……ショーンル!?」
昔見た、消えたはずの少年を見てサイグは驚いていた。
あのときの少年が、今度は敵となって現れていたからだ。
「やあ、久しぶりだね……元ディメガス所属四天王の一人、サイグ=グラディム」
「なぜお前がここにいる!!」
サイグは武器を片手に持ち、構えながらショーンルに向かって叫んだ。
「僕はあの後、アラグダズガ様の元へ行き――」
「アラグダズガって誰だよ!」
「いずれこの星を支配する偉大なる王さ」
「そいつが黒幕なのか!」
そんなサイグの反応に、ショーンルは薄ら笑いをした。
「何も知らないくせに、何ほざいてるんだよ」
悪魔ともいえるその言葉に、サイグは言葉を一瞬詰まらせた。
確かに、ショーンルのことは全く知らない。ただ、わかることは一つ。
「くっ、お前は何のために戦うんだ!」
「アラグダズガ様のためにだ……さて、そろそろ消えてもらおう!」
ショーンルは両手を前に突き出すと、周りに魔方陣が現れた。
「旋律の風よ――切り裂け! ウインドファング!!」
「がはっ!!?」
サイグは見えない牙に腕を浅く切り裂かれた。
一方、レンの方はフォーグライクスで隕石ある上空へと向かっていた。
あれから数分がたち、もうそろそろその場へ到着しようとしていた。
「もう少しで、隕石の上空に到着するよ」
「ああ……クレーターの外部に俺を下ろしてくれ」
少し、先ほどとは違う雰囲気を漂わせながらレンはルディフにそういった。
さっき、マイに話を聞かされてから、少し気が重くなっていた。
そして、ついに到着してしまった。
「さ、到着したよ。魔物にやられてこないでね……僕はここで待ってるから」
シートベルトを外してレンはルディフのほうへ向き直った。
「すまんな、迷惑ばかりかけて」
と、そう言って、少し悲しそうな微笑みを見せて、そのままハッチを開けて外へと出て行
った。
「はぁぁっ!」
「きゃぁっ!?」
イルアは間一髪のところでルディアの剣をすぐに取り出した曲刀で攻撃を防いだ。
先制攻撃を失敗したルディアは一旦イルアから離れた。
「なんで、あなたが!!」
少し困惑しながらも、イルアはルディアを睨みつつ曲刀を構えた。
「あなたにグライアは渡したくないのよ」
「なぜ!?」
「うふふ……何故でしょうね」
そんなルディアの微笑みを見たとき、イルアはある言葉を思い出した。
(『イルアちゃん、あと二回……最後の一回までに、覚悟しておかないと駄目だよ』)
――もしかしたら、今回はそのチャンスじゃない?――
ミリアの言葉を思い出したイルアは、今は助けるべきときではないと思った。
何故だかわからないけれど、そんな気がした。
「私は、ゲイザを取り戻す! 絶対に!!」
剣を握る手に、思いっきり力を入れた。
それを見たルディアは再び微笑んだ。
「でも、彼は何も覚えていないのよ? それでもいいのかしら」
「私は……私はきっと、この思いがゲイザに届くと思う。そして、全てを思い出してくれ
ると思うの!」
本当は、そんなことで助けられるかわからないけれど、それしか方法のないイルアはそう
目の前にいる彼女にいうしかなかった。
「そんなデタラメを……――ま、まさか、あのペンダント」
「え?」
なぜだかわからないが、ルディアはイルアの胸にあるペンダントを見て驚いていた。
「そうか……そういうことね。やっぱり、あなたには敵わないのかしら」
そのとき、どこからかはわからないけれど、頭の中に誰かの声が聞こえてきた。
いや、心に直接語りかけてきた。
――『あなた達が……人を縛りつけるのは許されないの』――
「っ……うるさい!! 人形のくせに、私の何がわかるっていうのよ!!」
いきなりルディアは剣を構えて、再びイルアに斬りかかってきた。
続く……
FC2 | キャッシング 花 | 無料ホームページ ブログ blog | |