第U]\話 『想いの数』
フォーグライクスの動力となる鉱石、雷轟石を手に入れるために科学の街ランジェラから
東にいった所にある雷の遺跡に来ていた。
「うわぁ〜、ビリビリ言ってるですの〜」
遺跡に入ってみると、壁が青い閃光が流れてビリビリと音を立てている。
それを不思議に思ったイルアは、壁に手を伸ばそうとしていた。
前を歩いているレンがそれに気づき、すぐに注意した。
「壁に触れるな。触れたら死ぬぞ」
「え、なんで?」
「感電死するからな……やはり俺の考えは正しかった――イルア、ここの精霊がいる」
「精霊? 雷の精霊?」
レンとイルアの言葉に気づいたのか、小刀が眩しく光った。
『雷の精霊、ヴォリズがいるわ』
氷の精霊セルグラムが小刀を通してイルア達にそう伝えた。
『雷轟石は彼が持っているから、どっちにしろヴォリズとは会わなきゃいけない』
「セルグラムの言うとおりだったら、雷轟石を手に入れるついでに契約をすれば一石二鳥
だろう? だから、この件を引き受けたんだ」
それを聞いたイルアとラティーは頷いて聞いていた。
『私たちのいた場所と違って、ここは入ってすぐにある一本通路を真っ直ぐ行けばいる。
頑張って……』
そんなセルグラムらしくもない優しい言葉をイルアにかけると、小刀の光が消えて声が消
えていった。
「さて、それじゃあ雷の精霊のところに行くぞ……――って、ん? この気配は」
雷の遺跡を入ってすぐの部屋から、通路に出ようとしたところ、レンは何か変な気配を感
じとった。腰にある鞘にはいった剣の柄を手にかける。
「どうしたの? 何かいるの?」
イルアもレンの様子を見て、曲刀の柄に手をかけ、辺りを見回した。
しかし、魔物や人の気配は一切しない。
「少し進んでみるか」
「大丈夫ですの?」
「わからない。だが、邪悪な気配がする」
一歩一歩、慎重に歩く。
やはり何の気配も感じられないイルアとラティーは、慎重に歩いていなかった。
「おい、もう少し慎重に歩け」
「そ、そんなことったって!」
イルアの大きい声が遺跡中に響き渡る。
その一言で、レンの顔は青ざめていった。
「ば、馬鹿か……っ!」
「あ、あの、イルアさーん……閉じ込められたですのー」
イルアとレンが後ろを振り向いてみると、先ほど通ってきた部屋の入り口が岩の壁により
塞がれていた。そして通路の先にある出口も塞がれ、閉じ込められてしまった。
そして通路の両脇に一つずつある大きい犬の石像が動き出した。
「イルア、戦うぞ!!」
「え、え、え!?」
レンは鞘から剣を抜くと、いつでも戦えるように構えた。
「ガーディアンの魔法が、なんでこんな所にかけられているんだ!」
やっとイルアも曲刀を構え、一匹のガーディアンに狙いを定めた。
「ねえ、ガーディアンの魔法ってなんなの?」
空を飛んで危険を回避しているラティーがイルアの質問に答えた。
「えっとですね、大切なものを保管してある場所に侵入者が入らないようにかける魔法で
すの。だから、イルアさんの声を聞いてその魔法が機能したってことですの」
「イコール、私のせいってこと!?」
「そうだ! いいから戦え!! 死ぬぞ!」
その瞬間、石の巨大犬がイルアとレンに一匹ずつ襲いかかってきた。
石の牙が口から剥き出し、噛み付いてきたが剣でそれを弾き返した。
「くっ、まさかこいつら、物理攻撃が効かない!?」
「石だから……なら! ウォータースパイラル!」
イルアは小刀から精霊の力を借りて、自分の曲刀に水を纏わせた。
「えぇい!」
目の前にいる一匹のガーディアンに斬撃を与えると、見事に水でびしょぬれになってその
ままバラバラに砕け散った。
「イルア、危ないっ!!」
レンの声で辺りをすぐに見渡してみると、すぐ右横にもう一匹のガーディアンがいた。
そして犬の硬い頭でイルアの腹部へと頭突きをした。
「っぅ――!!?」
吹き飛ばされたイルアはそのまま壁に叩きつけられた。
「イルアさん!?」
ラティーの悲痛な叫びが響き渡ったときと同時に、体中に電撃が走った。
「っ、あぁっ――うぅっ!!」
正しい叫びにならないような声が、イルアから発せられた。
それほどの痛みが体中に走りわたっているということだ。
「イルア!! くっ――マイ、俺に力を貸してくれ!!」
『闇の力を、あなたの力に――」
マイの言葉と共に、闇の炎が、レンの剣に纏った。
そしてレンがそのイルアを攻撃したガーディアンに攻撃をしかけた。
「奥義!! 漆黒滅牙斬っ!」
斬りつけられたガーディアンは闇の炎に包まれて、そのまま倒れた。
すぐにレンとラティーは倒れたイルアの元へと走り寄った。
少し服や顔に煤が付いていた。
「い、痛い……」
苦笑しながらイルアは目を細めて開けた。
その笑顔を見ているととても辛そうなことがわかった。
「生きてたのか……大丈夫か?」
「ちょっと、大丈夫じゃないかも……でも、行かないと。契約しないと――」
「ダメだ! 休まないとダメだ!!」
「契約、しないと――が、消えちゃ……」
何かを言いかけて、イルアは気絶してしまった。
倒れたイルアをレンは起こして背中に抱え、そのまま契約の間へと進んでいった。
「雷の精霊、ヴォルズ」
レンの一言でいつものように、祭壇に光が集まりそこに精霊が現れた。
今回はおじいさんの格好をした精霊。
長いひげを片手でさすって笑っている。
「ふぉふぉふぉっ。なんじゃなんじゃ、可愛いお嬢ちゃん背中に背負った若造」
「うっ……雷の精霊ヴォルズ。私たちは――」
「わかっておる。これが欲しいんじゃろう?」
片手をレンに向けると、その手のひらの中には雷轟石かと思われる黄色い石があった。
「はい、そうです……そして契約をさせていただきたい」
「ほうほう。それもわかっておる」
何故か全てを察しているようだ。とても怪しい。
「おじいさん、なんでそんなにわかってるんですの?」
ラティーはそんな疑問をヴォルズに問いかけた。
「見ていたからじゃ。先ほどの戦いをの」
『貴様っ!!』
気絶しているイルアの腰にある小刀から青い光が発せられ、声がした。
先ほどと同じ、セルグラムの声だった。
『貴様が壁に電流なんてながしているから、我が主が傷ついてしまった!』
「ほうほう、お主がそこまで熱くなるとはのぉ……冷静冷徹なお嬢ちゃんが」
『うるさい、黙れ!!』
なんだかよくわからないけれど、イルアが電撃を受けて気絶してしまったことにセルグラ
ムは怒っていたようだ。
「まあ、それなりの償いはしようと思っておる……お主らの望む雷轟石と契約をしてやろ
う。それでいいじゃろう?」
『仕方あるまい……我が主は無事だったし、な』
かってにセルグラムが話を進めているような気がするが、レンはイルアを床にゆっくりと
寝かせると小刀を手に取り、雷の精霊ヴォルズの元へと歩んだ。
「ほれ、これが雷轟石じゃ」
レンは左手でそれを受け取って、もう片方の手で小刀を握り締めた。
「契約者イルア。代理として契約させていただく……」
小刀をヴォルズの胸に突き刺すと、光になって消えていった。
「ラティー、早く戻ってこの雷轟石を届けるぞ」
「はいですの! イルアさんも休ませないとですの」
「ああ、そうだな」
そしてレンはイルアを背負ってラティーと共に科学の街ランジェラへと戻った。
続く……
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