第U]X話 『闇が震えるとき』


「やっぱり城の中にも敵が来ていたようね」
イルア達は城の中へと駆け込んでいると、あちこちで兵達が敵兵と戦っている。
どうやら魔物は入り込んでないようだ。
「それで、どうするんですの?」
「一番狙われる危険性のある人物……王の下へ急ぐぞ! イルア、案内を頼む」
「うん、一回だけしか行ったことないからうろ覚えだけど、任せて!」
この間、クレーターの報告に行ったときに一回王の間へと行ったことがあったので、案内
役には適していた。イルアが先頭になり、その後ろをレン、サイグ、ラティーはそれに続
いた。
王の間に行く間、いくつもの戦いが繰り広げられていた。
「ぐわぁぁっー!」
敵兵の剣によって殺される。イルア達はそれをただ走りながら見過ごさなければならない。
「いいのかよ!? オレ達も戦わなくてさ!」
走りながらサイグはその殺された兵を見て悔しそうに言った。
それにレンは振り返らずに答えた。
「辛いかもしれないけれど、今やるべきことをやらなければ取り返しがつかなくなるぞ。
だから、これは仕方が無いことなんだ。我慢しろ――」
「あ、ああ……わかったよ」
みんな見て見ぬふりをするのは辛いけれど、手遅れになる前にやらなければいけないこと
を優先しなければ……終わってからじゃ襲い時もある。
王の間に近づくに連れて、戦いの光景は過激になっている。
「まだなのか、イルア!」
「もうちょっと――ん? 光ってる……」
そのとき、ペンダントか光りだした。
何故かはわからないけれど、きっと何かがある。
「あの階段を上がった先が王の間よ!」

イルア達は一気にその階段を駆け上ると、そこにいたのは王と三人の兵、そして赤い服を
来ている女剣士の姿が目に入った。
「曲者!! 王には指一本触れさせん!」
「そう……立派なものね」
女剣士は剣を鞘から抜くと一瞬でその目の前にいる三人の兵を切り裂いて倒した。
レンはその光景を見て、とても驚いていた。
「何故貴様がここにいるっ、ルディア!!」
今までに無いくらい、怒りをあらわにして怒っている。そんなレンはどこかいつもと雰囲
気は違っていた。
「アラグダズガ様からの命令でね……王の命を貰いに来たの」
イルアやサイグ、ラティーから見ても美しい女性が、剣を持っている。
ルディアは優しい微笑みをレンに向けた。
「俺を惑わすな!! そして気づけ! 間違っている自分を!」
「私は間違ってはいないわ。闇に染まれば、全てが楽に見えるのよ」
「闇に身を任せたアンタは変わってしまった! それを俺が気づかせてやる」
「言ったでしょ? 危機を救う鍵は、こちらにあるって」
「ゲイザ=ライネック……か」
そのとき、女剣士の横に光が集まり、仮面を付けた剣士と妖精タイプのホムンクルスが現
れた。とても悪いタイミングだ。
「手間取っているようだな。手伝いに来た」
「ですですー」
「そうね……王には奥の部屋に逃げられてしまったし、先に目の前にいる人を倒してから
、それからじっくりと王を倒しましょ」
気づくと王は王の間から逃げて、いつの間にか姿を消していた。イルア達にとってはいい
ことだが。
「おいおい、こいつらと戦うのか?」
サイグは状況が掴めないままその場にいたが、ちゃんと武器は構えていた。
レンとイルアも武器を構えた。
「あの女剣士は俺に任せてくれ」
そういうと、レンは剣を構えてルディアに攻撃を仕掛けた。
「サイグさん、私たちはあの仮面剣士を」
「わかった! 任せろ!!」


剣と剣がぶつかり合う音が響き渡る。
「なぜ闇に身を染めた! 光を取るという手もあったというのに!」
「じゃああなたは……闇なの? 光なの?」
「俺は……――」
レンが悩みを見せた瞬間、ルディアは微笑んで見せた。
「ほら、あなたと一緒にいるドール……あの子も闇でしょう?」
その声を聞いたのか、レンのポケットから黒い光が放たれた。
『レンさん、ダメです!! 闇は孤独だと、前に言ったはずです!』
マイの言葉が、レンを我に戻した。
剣を持つ手に力を入れて、ルディアを弾き返した。
「そう……あなたは、闇じゃないのね。闇に身を任せつつ、心は光――」
それはレンに向けられた言葉なのか、マイに向けられた言葉なのかわからなかった。
「それをずっと続けている限り、あなたは闇の呪縛からは逃れられない」
「闇の、呪縛……?」
弾き飛ばされたルディアは立ち上がり、今度は攻撃の意志を示さず、レンに一歩一歩ゆっ
くり歩き出した。
「その答えは、もう時期わかるわ……」

グライアの相手はイルアとサイグの二人がすることになった。
イルアはグライアを睨み、曲刀を構える。
「イルアか……貴様はいつもいつも俺の邪魔を!」
「どうすれば、あなたは……ゲイザに戻ってくれるの?」
「うるさい! 消えろぉぉー!!」
グライアは両腕を前に突き出すと、光が現れその手には剣の柄が握られていた。
そのまま剣を構え、イルアへと攻撃を仕掛ける。
黒い剣で一撃、白い剣で二撃、攻撃を繰り出したがイルアの曲刀によって防がれた。
「てえぇい!」
サイグが連結型双剣を構え、そのまま斬りかかったが空を斬り、その攻撃は外れてしまっ
た。そしてグライアの斬撃がサイグに向けられた。
「邪魔だぁっ!」
「くっ、何!?」
間一髪のところでサイグは剣を受け止めたが、剣に掛かっている力が強すぎで弾かれた。
「用があるのはお前だ、イルア!」
「ゲイザ……っ!」
「俺をその名で呼ぶな……ぐっ!」
いきなりグライア仮面を抑えて苦しみだした。
ルミィーはすぐにグライアの傍に飛んできた。
とても心配そうな顔をしている。
「だ、大丈夫ですかー? 痛いんですかー? 回復しますかー?」
「ルミィー、グライア! 一旦引き上げるわよ」
ルディアがすぐにグライアに駆け寄ってきた。
「やはり、あなたとグライアを会わせたら光が――」
何かを言いかけたまま、ルディア、グライア、ルミィーの三人はそのまま光に包まれて消
えてしまった。
「くそ、逃がしたか……」
レンは悔しそうに俯いて呟いた。
と、そのときサイグが何かを思い出したかのようにいきなり大声を出した。
「そうだ、エーレが危ないっ!」
そういうと、すぐに王の間から出て駆け出して言った。
「ねえ、レン。私たちも行きましょう」
「あ、ああ……わかった、行こう」
イルア達もサイグの後を追い、王の間、そして城から出て行った。


続く……

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