第U話 『ミリアのペンダント』
「うむ、そろそろ旅立つ準備ができたようじゃな」
「はい」
研究所の外。イルアとラティーが旅立つのをルアグ博士が見送っている最中だ。
ゲイザを探すと決めたイルアはラティーを連れて旅立つ決意をした。
旅をするために必要不可欠なもの、ガルドや薬草などをポーチに入れて、旅の準備を
済ませた。
「やつを探すのなら、ここから南にある港から船に乗り第二大陸、クォルピア
を目指すとよいじゃろう。ほれ、地図じゃ」
ルアグ博士から地図を受け取ると、その地図をじっと見てみた。
実ははじめて見た地図だったのだ。初めてマルディアグという世界の大きさに
驚いていた。
「博士の言う第二大陸っていうのは、これかな?」
地図を見てもよくわからないイルアは顔の横で飛んでいるラティーに聞いてみた。
今いる、第一大陸セルディーアという場所の下にある大陸を指さして。
しかしラティーもうーんと言ってから「私にはさっぱりわからないですの」と言って
ルアグ博士にの方を見たところ、ただ頷いて見せただけだった。
「それじゃ、博士」
行く先を確認したイルアはお辞儀をし、くるりと背を向けて歩き出した。
「それでは博士、いってきますですの!」
ラティーもイルアと同じようにお辞儀をする。
そんなラティーを心配している様子のルアグ博士はもう一声かけてあげた。
「ちゃんと助けてやるのじゃぞ?」
「もちろんですの……私、頑張るですの!」
にこやかに笑うラティー。
しかし、そんなラティーを心配したルアグ博士は本当は別な方で心配していた。
「それじゃ、博士ー」
ラティーがゲイザをどう想っているのか。
好きなのか、ただ慕っているだけなのか――
ルアグ博士はそれだけが心配だった。
マルディアグの第二大陸クォルピアを目指すため、港町デュラズへ向かう途中の
山道。イルアとラティーはこれからどうするか話し合っていた。
「イルアさん、これからどうするんですの?」
ふと聞かれたが、イルア何故第二大陸を目指すのかわからなかった。
ルアグ博士は、何かを知っているのか。しかし、いまさら考えてもわからないし
聞いても教えてくれないだろう。
「クォルピアを目指して、ついたら情報を集めようとおもうのだけれど、本当に
第二大陸にいるのかな?」
その疑問にラティーは一瞬考え込む。
「うーん……私も詳しい事はわからないですの〜。でも、とりあえず行ってみないと
わからないですの」
「そうね。さ、早いところ港町デュラズへ行きましょう」
そして話が終わり、イルアとラティーはデュラズへ向かうために山道を登っていこうとしたとき、
「待て! そこの女」
「誰!?」
謎の男の声に、イルアは呼び止められ歩いていた足を止める。
目の前に現れる人の影。何か、嫌な気配をイルアは感じ取った。
誰かに似ている気配。
「お前から、物凄い光の力が放たれている」
黒いフードを羽織ったツンツン髪の男が、イルアを見る。
光の力、などといきなり言われても――
「光の力……? あっ」
イルアはふと気づく。
光の力が放たれている。自分からではないはずだ。
そうすれば、心当たりであるものはただ一つ。
「ゲイザの、ペンダント……」
胸にかけられたペンダントに、そっと両手を添えて俯いた。
何故自分にかけられているのか。何故ゲイザは……
わからない疑問がまた一つ、イルアの胸を締め付ける。
(どこにいるの……?ゲイザっ――!)
ゲイザのことを想うと胸を締め付けるように苦しい。
と、そのとき
「違いますよ、イルアさん」
いつもと口調と違う、ラティーの声が後ろから聞こえてきた。
どこか重たい言葉だった。
「それは、ミリアさんのペンダントです」
「ミリ、ア……? 誰?」
聞いた事のない名前に再び疑問を抱くイルア。
ラティーだけは知っていた。それが誰のペンダントだったのか。
グラディームへ行ったときにゲイザに聞いた、あの話を。
「ゲイザさんが、昔好きたったけれど、殺さなければならなかった人、ですの」
ゲイザの過去。
今思い返せば、とてもつらい過去を背負っているようにも思えた。
そう、なにか……誰かと、イルア自身を重ねているような……
「そのペンダントからだったのか」
謎の男はイルアのかけているペンダントを見て言った。
そして、男はそのペンダントへ触れようよする。
「光の力……ちょっと見せてもらう」
「ちょ、ちょっと!!」
イルアの抵抗も虚しく、男に思いっきりペンダントに触れられ、
指が、ペンダントに触れた瞬間、辺りに眩しい光が放たれた。
「ぇ……!」
「何っ!?」
眩しい光が放たれ、イルアは目を閉じた。
光が消え、目を開けると自分の立っている場所から少し離れているところに
ツンツン頭の男が倒れていた。というか、吹き飛ばされたのかもしれない。
「くっ……光の壁、だと?」
吹き飛ばされた男は地面に叩きつけられた衝撃で痛めた腕を押さえ、立ち上がった。
その自体を把握できていないイルアは、黙り込んでその自分の胸にあるペンダントを見ていた。
「その光……あ、いや――」
男は何かを言いかけて黙り込み、フードの中に手を入れた。
「ふぅ――危険だ。その光は」
そして、フードの中からかすかに聞こえた。
鞘と剣が掠れる音が。
それを聞き取っていたラティーはすぐイルアに報告した。
「イルアさん、剣を持ってください!!」
「えっ?」
「いいから早くっ!!」
剣を持てと言われたことに疑問を持ったイルアだが、その疑問はすぐ解けた。
「はぁっ! 真空撃!!」
男はフードの中からいきなり鞘から剣を抜き、イルアに向かって斬撃を放った。
空を切り裂き、その斬撃は風とともにイルアを襲う。
「避けてくださいですの!」
「うんっ!」
ラティーのサポートのおかげで間一髪のところでその空を切り裂く斬撃からは間のがれた。
回避されたその斬撃はイルアを通り過ぎて後ろにある岩にぶつかり、その岩を真っ二つに砕いた。
「あんなのが当たったら、一撃で死んじゃうわよ……」
二つに割れた岩を――その破壊力を目の当たりにしたイルアは、戦いという恐ろしさを
改めて実感した。
「よく避けれたな、女」
攻撃を仕掛けてきたツンツン頭の男はイルアを馬鹿にしたようにニヤリと笑い、剣を地面に突き立てた。
フードに右手をかけると、思いっきり剥いでその場に投げ捨てて見せた。
本気で来るということだろう、とそう思いイルアも戦う準備をした。
といっても、武器を構えるだけなのだが。
「わ、私だって……戦うことぐらい出来る」
腰に下げてある鞘に納まった剣―曲刀―の柄を片手で握り締め、思いっきり引き抜いた。
初めての剣での実戦で、少々緊張する。
本当のことを言えば、剣なんて使ったことなど一度もなかったのだ。
「女のくせに、剣を使うのか……」
「むっ――」
その挑発のような発言(イルアにはそう聞こえた)にちょっとだけ怒りを覚えつつも、
なんとなくで剣を構えてみた。
「一つ警告しておこう」
男は両手にはめられてあるグローブを引っ張り、そして地面に刺さってある剣を抜き取った。
「そのペンダントは危険だ。異常なほどの光の力を持っている」
「だから、何?」
その警告を無視するようにイルアも言い返す。
というか、言い返す言葉がこれしかない。
「破壊、させてもらう。力ずくでもだ」
「――せない」
顔を俯き、イルアは拳に力を込める。
表情は長い髪によって遮られ、よくは見えなかった。
「そんなこと、絶対にさせないっ!!」
「イルアさん……」
俯いたまま、大きな声でその男の警告を無視をする宣言。
それを聞いた男は剣を構えた。
「ならば……覚悟しろ」
続く……
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