第]話 『訪れた異変』


イルア、ラティー、キシュガル、リュアは共に風の精霊シルフィーラとの契約を
求めるために、戦っていた。
「そうね……あなた達二人は前に出て戦って! 私は後ろから魔法で攻撃するから」
「オッケー!!」
「うんっ!!」
イルアの指示にキシュガル、リュアの順に返事をし、イルアはその場で曲刀を鞘にしまい、
小刀を取り出して詠唱を。キシュガルとリュアはそれぞれ武器を構えシルフィーラへ向かって
走り出した。
「三人掛かりで来ようったって――トルネードシュートッ!!」
背中にある翼で華麗に空を飛び、シルフィーラは弓矢をキシュガルに向け、矢に風を
纏わせ放った。
「だから、群青の守護神を、なめんなぁ!!」
再び槍を縦に構え、両手でクルクルと回し竜巻を作る。
「サイクロン、ディフェンサー!!」
矢は威力を失い、そのまま地面へと落ちていった。
それに気を取られている間にリュアがシルフィーラの近くまで来ていた。
「はぁぁっ! 奥義、竜鳳・火炎魂(リュウホウ・カエンコン)!!」
リュアは地を蹴り上げシルフィーラのいる空中へ飛び上がると、炎を纏った
ヌンチャクを振り回した。
しかしヌンチャクはただ空を切っただけだった。
「あったらないよーだ! べーっ」
さっきいた場所から少し離れた空へ、シルフィーラはいた。
リュアに向かって舌をだしている。
「んもぅっ!! なんかムカツクゥ!」
リュアは地面に地団駄を踏んで怒りをあらわにした。
そして後ろにいるイルアが、魔法の詠唱を終えた。
「地よ……敵を貫けっ!!――ストーンニードル!」
地面からシルフィーラに向かって石の氷柱が無数でるが、空には飛ばずその場に出るだけ
だったので空にいるシルフィーラには効果がなかった。
(どうしよう……地面の攻撃が当たらない!)
「イルア、さっきの魔法もう一回やってくんねーか?」
キシュガルが槍を構えて、イルアに言った。
「わ、わかった……」
よく事情はわからないけれど、何か得策でもあるらしいので再びシルフィーラに向けて
ストーンニードルの詠唱をした。
「地よ……敵を貫けっ!!――ストーンニードル!」
再びシルフィーラが真上にいる地面から石の氷柱が現れる。
「うっしゃ、チャンス!!」
槍を構えたキシュガルが、その石の氷柱が現れた場所へと向かった。
そしてその場所へたどり着くと、槍を横にして上に突き出した。
「くらいやがれっ!! サイクロンスピア・アーク!!」
槍を物凄い速さで回して風の竜巻を作り出した。
すると、石の氷柱はその竜巻に飲み込まれ、シルフィーラを目掛けて物凄い速さで
飛んでいった。一、二本シルフィーラを掠め、空から落とすことに成功した。
「っしゃ! やったぜ!!」
「キシュガル、やるぅ〜♪」
リュアがキシュガルに拍手と褒めの言葉を送る。
「うぅ〜……参ったよぉー。契約してあげるよ……ほら、さっさとその小刀を突き刺して」
なんだか大人しくなったシルフィーラは少し生意気っぽく感じたが、イルアは何も言わないで
黙ったまま小刀を取り出してシルフィーラに近づいた。
「風の精霊シルフィーラ。契約させてもらいます」
そういい、小刀をシルフィーラの胸に突き刺す。そして辺りが光に包まれ、光が消えたとき
にはシルフィーラの姿がなかった。
「契約完了、ですの!」
「あーあー……疲れた疲れた。さっさと村に戻ろーぜ」
キシュガルはあくびをして槍を片手に持ったまま両腕を上げた。
「二人ともありがとう。契約の手伝いまでしてもらっちゃって」
イルアは申し訳なさそうな顔をしてキシュガルとリュアとは目を合わさずに俯き気味に
そういった。
「いいのいいの! わたし達は困ってる人たちの為に旅をしてるんだから。
それに、『仲間』のイルアさんを助けてあげるのは、当たり前でしょ?」
「そういうこった! さ、村に戻ろうぜ」
そうして、イルア達は再び長い道のりを歩いて村へ戻っていった。


ピューウラ村に戻ったイルア達は宿屋に来ていた。
「あなた達とはここでお別れだね」
「寂しくなるですの〜……」
イルアとラティーは世界の危機を救うため、再び精霊との契約をしなければならないので
再び旅に出ようとしていた。
キシュガルとリュアの二人はもう少しだけこのピューウラ村に滞在し、困っている人達の
手伝いをしようと考えているらしい。
「またどこかで会えるさ! 同じ世界にいるんだからな」
にこやかだけど少し爽やかな笑顔でキシュガルはイルアとラティーに言った。
「うん、そうだよ。これからも頑張ってね! 世界のことも大切だけど、ゲイザさんも
イルアさんにとっては同じくらいか、それ以上に大切なんだから」
とてもイルアのことを心配しているらしい。リュアも微笑んでイルアに言った。
「うん……二人も頑張ってね」
キシュガルとリュアの笑いを返すように、イルアも二人に微笑み返した。
「わたし達も、ゲイザさんの情報を手に入れたらルアグ博士の研究所へ連絡しておくから」
「うん、ありがとう――それじゃ二人とも、またね」
イルアとラティーは宿屋から出て、キシュガル、そしてリュアと別れると
ピューウラ村を出た。


イルアとラティーはピューウラ村を少し南にいったところにある草原の真ん中にいた。
その草原は緑の草は生い茂ってはいなく、ただ白い雪が辺りにあるだけだった。
「どうするんですの? もうどこに精霊さんがいるかわかりませんし……」
「困ったわね……やっぱりここはルアグ博士の所へ一旦引き返したほうがいいかな」
どこに行けばわからなくなったイルアは途方に暮れていた。
そして、何気なく空を見上げてみる。
「……………青い、な」
「ん、空を眺めているんですの?」
肩に乗って隣にいるラティーがイルアのほうを見て聞いた。
「えぇ、落ち着くわよ――なんとなく、だけどね」
「へぇ〜……そうですのー……」
イルアは肩に乗っかっているラティーに微笑んだ。
そして再び空を見上げた。でも、いつもと何かが違って見えた。
「なんか、違う……いつもの空じゃない」
『邪気が――来る』
「えっ?」
女の子の声が途切れていたけれど確かにイルアには聞こえた。
と、そのとき、見上げていた空と胸にあるペンダントに異変が起きた――


傷も治り、やっと遺跡から出たレン。
天気は晴れ渡っていて、とても気持ちの良いものだった。
しかし、ただ青くて綺麗な空だったけれど、少し異変を感じた。
「ん? あの黒い点はなんだ……?」
レンは独り言のようにマイに言ってみたけれど、返事は返ってこなかった。
それとは全く違う、別の言葉を口にした。
『レンさん……嫌な予感がします。とても……口では言い表せないほどの邪気が――』
黒い宝石から聞こえた声は、今までにも聞いたことのないとても怯えている声だった。
邪気とは何だろう、そう思いつつレンは空を見上げた。
「何か……何かを感じられることだけはわかる。もやもやした、何かを……これが邪気なのか?」
なんだか、空を見上げてから胸の中がモヤモヤとして落ち着かない、そんな感じだった。
『そうです――でも、本当に変……』
不思議そうに、そしてまだ怯えた声でマイは呟いている。
『空から、邪気を感じる。空から、邪気が落ちて――』
マイの言葉が途中で途切れた。そして、黒い宝石が入っているポケットから黒い光が
放たれた――


T章『光と闇を探す旅』
――終わり――

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