プロローグ
「俺は……誰だ――ここはどこだ」
薄れた意識の中、辺りを見渡す。
ホコリだらけの家の中にいたことが確認できた。
何も言わないで、彼は外に出て行った。
外は雪が当たり一面に降り積もっており、靴に入る雪のせいで余計に
寒く感じた。
何もわからない。
彼にわかっているのはそれだけだった……
ただ。
ただ、胸がとても苦しい。痛みなどではない。
憎しみ、怒りで心が満たされている。
「うっ……ぅっ、ぐぅっ!」
いつからかはわからないけれど、気づけば片手に剣を握っていた。
何故持っているかはわからない。
その剣を見た瞬間、とてつもなく『破壊』という衝動に突き動かされた。
「壊したい……全て、を。殺したい……っ!!」
黒髪の少年は、ただ胸を押さえるように服を左手で掴み、右手に持っている
剣を血が止まるくらいに握り締めた。
と、そのとき。彼の目の前に一人の女が現れた。
「……光の心が、闇の心にのまれたのね」
「っ!!」
男や女、子供などは関係になく、ただ人を殺したい。そういう衝動に、
「死ねぇぇっ!!」
「無駄よ」
女はすぐに腰に下げてあった剣で少年の剣を払い落とした。
それは、一瞬の出来ことで少年は剣が飛ばされたことも気づかず、
殴りかかっていた。
「あなたの力が、必要なの」
「な、なに?」
その女の言葉で、彼の動きが止まった。
破壊という衝動は収まり、ただ少年は立ち尽くしていた。
彼はもう、大切な人など覚えてはいない。
自分の大切なモノを犠牲にしたことも覚えていない。
そして、自分の大切なモノがなんだったのかすら、覚えていない。
すべてを失くしてしまった少年。
そんな少年に助けられた少女が、今――
二度目の大切な人の喪失……
彼は、大切な人を助けるため、自らの『記憶』と
『光の心』を引き換えに、イルアを永遠の眠りから目覚めさせた。
どこからか聞こえる謎の声。
それを手がかりに旅をするイルア。
さらに襲い掛かる悲しみ、苦しみ……
光を手掛かりに、イルアはゲイザを探す。
新たな仲間、新たな力、そして――新たな敵。
今までの謎が全て解き明かされる。
彼女は……
光の『希望』を掴み取るか。
それとも闇の『絶望』に飲まれるか。
そして――最後の心の物語が動き出す……
Mind of Light V
―Story of light and the dark―
〜光と闇の物語〜
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