第U]U話「伝説」
ゲイザ達は、スレイドに言われた通り理の精霊がいる
調和の遺跡にいた。
「この世界には3つの精霊がいます。光、闇――そして、理(ことわり)。
これが最後の精霊という訳ですね」
マイは遺跡を見ていった。
そのとき、ものすごく強い魔力の壁を感じた。
「ゲイザさん、ワタシとミリアさんは入れないみたいですね」
「そうだな・・・・・・俺一人で行って来る」
調和の遺跡に入ろうとしたゲイザをミリアが呼び止めた。
「ゲイザ、気をつけてね」
「あぁ、わかってる」
そう言うと、ゲイザは遺跡の中へ入っていった。
ゲイザは遺跡へ入ってみると、神聖な雰囲気がした。
そして、理の精霊に会うために奥に続く道を歩いていった。
すると、部屋があり、そこで行き止まりとなっていた。
そこで目に付くのは壁に長く書かれた絵。
とりあえず、近くで見てみると事にした。
「これは、何かを表しているのか? 光と……闇?」
その書かれている絵の両端に光の精霊シャウナと闇の精霊ディアライガらしき
ものが描かれていた。
「……これは、なんだ?」
シャウナとディアライガの周りに描かれているものを見た。
触手が絡みつき、巨大な塔――というか、スカートっぽくなって、
その頂上には人間らしきものがいた。しかも、上半身だけ。
「下に、何か書いてある……ド、ウ…ル?」
「それは、ドール――しかしあなたの知る、ドールではありません」
後ろから声がした。そこには、理の精霊メイラらしき人が立っていた。
光と闇の精霊と同じように翼がついていた。しかし、彼女は違った。
6つの翼にそれぞれ違う色の羽。
「ドールの完全体です。それは」
そう言われるとゲイザは再びそのメイラが言ったドール完全体の絵を見た。
「完、全……体? なぜ、ドールは完全体になってしまうんだ?」
メイラは辛そうな顔をして、ゲイザに歩み寄ってきた。
「あなたの記憶をみせてもらいますね……」
そういって、手のひらをゲイザのおでこに当てた。
「大体のことは、スレイドに教えてもらっているのですね」
「ん……あ、ああ――しかし、詳しくは教えてもらっていない」
「あなたは、全てを知る覚悟ができていますか?」
少々力強い声でメイラはそう言った。
そしてゲイザは少し黙ってから、メイラを見た。
「ああ」
「そうですか。わかりました……」
メイラは目を閉じ、そして語り始めた……
「ドール。あなたの知っているドールは、不完全のドールです。その不完全の状態が
彼女達を保っている……しかし、完全体になる方法があります。
それは汚れた心を持つ者に、彼女達のペンダントを触られる……
そうすることで、不完全体のドールは完全体になってしまいます」
「汚れた心?」
「そうです。この世界に野望を秘める者がいますね?」
「ファムレイグの……王か」
ゲイザはスレイドに聞かされた話とラムダの姿を思い出した。
「その者に彼女達のペンダントを渡しては駄目です。
渡してしまったら、昔の二の舞です……」
「昔の、ニの舞……だと?」
「それでは、昔のことをお話しましょうか」
ゲイザは、壁に書かれている絵を見た。
「その絵は、昔にあった出来事を描いたものです。
両端には光と闇の精霊。その周りにいるのはドールの完全体。
そして、中心にいるのは私と、勇者、スレイド=ヴァリアー……」
「スレイド=ヴァリアーだと……!?」
彼は今、この世界にいて生きている。しかし、なぜ昔の勇者だったのか。
ゲイザは気になった。
「彼は、今起ころうとしていることがわかっていたのです。
時を越えて、それを止めようとした――ドールを封印したのも、
彼です。そして、私も元は人間でした」
ゲイザはメイラを見た。外見は15、6歳ぐらいだろうか。
確かに、光と闇の精霊より人間っぽい。
そしてメイラは、悲しい顔をして俯いていた。
「ドールの完全体が、精霊によって作られ……特殊な能力、『モノ』に心を持たせる
というものを生まれつき私は持っていました。そして、ドール達は望みました。
心を……だから私は心をあげました。それがいけなかったのでしょうか――
ドール達による人への攻撃はさらに強まり、最後には世界滅亡の危機にまで達しました。
スレイドはそれを止めるため、私を生贄にし、ドールを封印しました。
そして私の魂を、精霊たちは救ってくれた……そして、私は理の精霊となって、
生きてきました」
そして、またその悲劇が繰り返されようとしている。
ゲイザは今やっと、事の重大さに気づいた。
「それで、俺にどうしろというんだ?」
「世界にある、野望の渦を……鎮めてください」
「野望を持つものを殺せ、と?」
「そういうことに、なりますね……」
再び、ゲイザは壁に書いてある絵を見た。
ドール……勇者……精霊……心――
「わかった。それが俺にしかできないことだというのなら……」
「そうですか……それじゃあ、このペンダントを持っていってください」
理の精霊メイラはゲイザの首にペンダントをかけてあげた。
「そのペンダントは、あなたが本当のマインドオブライト(光の心)を知ったとき、
あなたに力を貸してくれるでしょう……」
「マインド、オブ、ライト……」
ゲイザは首にかけてもらったペンダントを手に乗せて見た。
「あなたに、神のご加護がありますように」
微笑んで、そう言ったメイラは消えてしまった。
「勇者、スレイド……そして理の精霊、メイラ――か」
ゲイザは複雑な気持ちで遺跡から出て行った。
続く
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