第U]T話「竜巻と閃き」


「タクスーッ!!」
ネイアーが叫んだ。
キシュガルが放った竜巻は、ネイアーとガイのすぐ近くまで迫って来ている。
「ノヴァ、ドライブッ!!」
空から1本の剣が降ってきた。
そして、剣が地面に突き刺さりそこから爆発が起こった。
その爆発で、竜巻が消滅した。
「なにっ、オレの技を消した!?」
「攻めがまだまだ甘いよ」
全員は声のするほうを見た。
そこには傷を負って動けなかったタクスが2階建ての家の屋根に立っていた。
そしてその場から飛び降り、地面に突き刺した剣を抜いた。
「ふぅ、間に合った……しかも間一髪だし」
「へっ……敵が一人増えたところでオレにはカンケーないし」
キシュガルはへらへら笑って槍を構えた。
「さぁ、どっからでもかかって来な」
「でぇぇい!!」
「そこよっ!」
ルベリィとガイがキシュガルを挟み撃ちにするように斬りつけた。
「無駄無駄。2人掛かりで来たところで、オレはやられない」
槍を2本に分解させ、その分解させた槍でルベリィのレイピアとガイの
短剣を受け止めた。
「そんな!?」
ルベリィはそう言って後ろに下がり、遅れてガイも後ろに下がった。
「はぁぁっ!ラピッドジャベリンッ!!」
キシュガルはタクスを目掛けて走り出し、2本に分解した槍の先で
物凄い速さで無数に突き刺す。
そのとき、タクスにはわかった。どの場所にどのような速さで
キシュガルが槍で突いてくるか。
「当たるかっ!」
その攻撃をかわしつつ、かわせない所は剣で弾いた。
「そんなっ、馬鹿な!」
「次はこっちからだ! 真空斬滅波!」
「いくよっ! サテライト、フォール!!」
タクスは剣を横に構え、キシュガルに真空波を飛ばし、
ネイアーは火を纏った矢を飛ばした。
「サイクロン・ディフェンサー!!」
対するキシュガルは槍を回し、竜巻で風を起こして壁を作った。
すると見事に真空波は消滅し、放った矢はキシュガルに当たらず落ちた。
「そんなんじゃ、オレに傷一つつけれないよ?」
また、キシュガルはへらへら笑って余裕を見せた。
「さすが群青の守護神……守護神といわれた訳がわかる気がするわ」
ルベリィはキシュガルを睨み、レイピアを構え直しながら言った。
守護神というだけあって、さっきからタクス達が与えた攻撃は全て
回避せず防御している。ワザとだろう。
キシュガルほどの身軽さだったらかわせるはずだ。
「へへっ、もう終わり? じゃあ、また攻撃させてもらうよ……
てりゃぁぁぁっ!!!」
槍を物凄い速さで回転させ、巨大な竜巻ができた。
「サイクロン・クラッシャーァァァッ!!!」
巨大な竜巻は周りの家を吹き飛ばし、地面さえもえぐり取っている。
「させるかっ!!」
タクスは巨大な竜巻の中心にいるキシュガルにむかってジャンプした。
「風に飛ばされるなら、飛ばされないぐらいの速さで攻撃すればっ!」
ジャンプし、空中に浮いているタクスの速さが早くなりその竜巻に入っていった。
「何ッ!? なぜこの竜巻の中に!?」
「はぁぁぁぁぁっ!」
ジャンプした状態でタクスが剣を縦に振り、キシュガルを斬りつけ
竜巻の外へそのまま出ていった。
「奥義、疾風瞬華斬……!」
タクスが地面に着地した時、竜巻は止まり、キシュガルはその場で膝をついた。
「っち、今日は日が悪かったかな」
そういってキシュガルはその場から去った。

キシュガルが去った後、他のヘズリィ兵も退いていったようだ。
「なんとか、勝てたな……」
タクスは剣を腰に下げている鞘にしまった。
「これが、タクス=カタスロフィの強さなのね……」
ルベリィはキシュガルが退いたときからずっとその場でタクスを見ていた。
あの群青の守護神に攻撃を与え、退かせた――
そんな人間はいないに等しかった。
しかし、目の前にいる傭兵のタクス=カタスロフィはそれをやった。
「ん、君は?」
タクスはルベリィを見た。そして目が合った。
「……わたしは、ルベリィ=ハオラティ=マイヤーよ。タクス=カタスロフィ」
ルベリィはネイアーとガイに自己紹介したときみたいには笑っていなかった。
「タクス、大丈夫?」
ネイアーがタクスを見た。すると、服から血が染み出ていた。
「大丈夫、すぐ城に戻って休むから……」
そういって、タクスは城に行った。
タクスがいなくなった後、ルベリィはネイアーに話しかけた。
「あれが、タクス=カタスロフィなの?」
「そ、そうだけど……」
「なんで、あんなに強いのよ――剣士じゃないのに」
「あたしにもさっぱり……あのスレイド=ヴァリアーって人にも勝ってるし、
唯一勝てなかったのはあの聖白銀の戦神だけね」
「そう……それじゃ、王様に報告しにいきましょ」
ルベリィは一人で勝手に城に向かって歩き出した。
「ち、ちょっと待ってよ!」
ネイアーとガイはルベリィを追いかけて城へ戻った。


続く

FC2 キャッシング 無料ホームページ ブログ blog