第Z話 『スィアリ』
ゲイザ達は山を降りて、スィアリィという街に来ていた。
なんだか、たくさんの人がいる。
「あ〜、ここはスィアリィという街ですの。結構商売とか盛んな街で、
色んなめずらしいものがあるはずですのー」
ラティーにそう説明してもらったが、ゲイザ達がまず目に映るものは
グラディームとかなり違うこと。
「なあ、よくわからないものが結構あるぞ?」
ゲイザは肩に乗っているラティーを見ていった。
よくわからないもの、それは勝手に光るものや色々。
「あ、そうでしたそうでした〜。マルディアグには魔法を使ったものが
たくさんあるんですの。自動で動くものから、携帯通信機、それにそれに武器も魔法を付属した
ものや魔法銃といった魔力の弾を発射するものとか……色々あるんですの」
「へぇ〜」
と、そういったゲイザだが、本当はまったくわからなかった。
「百聞一見にしからず、ってことで、自由行動でOKだよね?」
「わたしもそれに賛成ー」
タクスとルベリィはもうこのスィアリィという街を探索というか、
見て回る気満々だった。
「そうだなぁ……」
そういってゲイザは辺りを見渡した。
と、そのとき丁度宿屋が目に入った。
「じゃあ、あの宿屋に集合ってことで」
「わかった、じゃ、俺はルベリィと見て回ってくるから」
「また後でね、ゲイザくん」
タクスとルベリィは勝手に解散し、二人でどこかに行ってしまった。
「俺達もどっかいくか」
「いくいくー、ですの!」
ゲイザとラティーもどこか見て回ることにした。
沢山の人ごみのなか、タクスとルベリィが見つけた店。
それは武器屋だった。
タクスはルベリィを誘って、武器屋の中に入っていった。
「いらっしゃいませ!」
店のレジの前にいる人がタクスとルベリィが入ってくるなり
大きい声で言った。
「すごい、物凄い種類がある……」
タクスは店の中を見渡しながらそう呟いた。
剣、銃、杖、斧、短剣……と沢山の種類がある中、タクスは
銃の置いてあるコーナーへと歩いていった。
「ちょっとタクス。なんで銃なの?」
タクスの後ろをついて歩くルベリィは不思議そうに聞いた。
そのとき、丁度銃の置いてあるコーナーについた。
長銃(ライフル)、拳銃(ハンドガン)、マシンガン……タクスは
その中からもっとも扱いやすい拳銃を手に取った。
「ねぇ、聞いてるの?」
少し怒った声でルベリィはタクスに言った。
するとタクスは手に取った拳銃を持ち、撃つ構えを取った。
「剣だけじゃ、遠くの敵には攻撃できないだろ?
だから銃も欲しいな〜って思ってさ」
「タクスが使いこなせると思う?」
「やれば出来るさ」
「ホントに?」
「ホント!心配しないでって」
そんな会話をしてるとき、店の人がタクスとルベリィに近づいてきた。
「お客さん、扱いやすい拳銃をお探しで?」
「はい。でも、結構威力のあるやつがいいんですけど」
「ん〜そうですねぇ……」
そういって店員は並んでいる拳銃を見た。
すると上の棚に並んでいる、一つの銃を手に取った。
「これがいいんじゃないでしょうか?」
タクスは店員から銃を渡された。
確かに、重みもそんなになくて握りやすい。
「その銃、魔法拳銃フォルアルスは威力もありますよ。魔法を使った銃ですからね」
「魔法を使った銃……?」
「そうです。人の体内のマナにある属性を使った弾が発射できるんですよ。
なので弾数は気にしなくていいんですけど、体内のマナを使いすぎると体に悪いんで、
扱うときはそれに気をつけてくれれば、十分強いものだと思います」
そう店員にいわれたタクスは少しの間悩んだ。
「それじゃ、決まったらレジまで持ってきてくださいね」
店員は速足でレジに戻っていった。
「そうだな……これにするか」
何かに気づいたルベリィはタクスに話しかけた。
「あ、タクス……そういえばさ、お金ってわたし達の世界と同じなのかな?」
「確かに……俺達の世界じゃガルドだったけど、まあ行ってみればわかるか」
密かに不安をタクスは抱きつつ、レジに向かった。
「それにしたんですね」
店員は微笑みながらタクスから銃を受け取る。
「4600ガルドになります」
「よかった……」
通貨がガルドだったため安心したタクスはそう呟くと4600ガルドを店員に渡した。
「毎度ありがとうございました」
そう店員に送られて、タクスとルベリィは他の場所へと行った。
「ちょっと疲れたから休憩にしよう……」
「沢山歩きましたからね〜」
ゲイザとラティーは丁度近くにあった喫茶店に入っていった。
喫茶店に入ると、座れる席を探してゲイザはすぐ座った。
椅子に座ると足を伸ばした。結構歩いたので疲れてしまった。
すると店員がゲイザのいるテーブルに来た。
「お客様、ご注文は?」
「あ、えぇっと……ココアで」
「ココアですね。少々お待ちください」
そう言うと店員は去っていった。
「ゲイザさん、ルアグ博士のいる町レスコォールまで行くには
まだ結構歩かなきゃいけないのですの」
「あのな、足痛いときにそんな話しするな……」
ゲイザは苦笑してからため息をついた。
世界を救うために別世界から来たって言うのに、こんなことやってていいのだろうか、
とゲイザは少し不安に思っていた。
「あ、来たですの!」
「ココア、お待たせしました」
さっきの店員が銀のトレイにココアの入ったカップをゲイザのいる
テーブルに置いた。
「それではごゆっくり」
そういうと再び去っていった。
とりあえずゲイザは暖かいココアを一口飲んだ。
そのとき、どこからか話し声が聞こえた。
「――ルゥーディムって村知ってる?」
「あぁ、近くにある村か」
「そこ、近づかない方がいいよ」
「え?なんでなんで?」
「ディメガスの連中に狙われてるんだぜ?
あの村。いつ襲撃されるかわかったモンじゃねえよ」
そこでゲイザはその話を聞かないでもう一口、ココアを飲んだ。
そしてラティーに質問した。
「ディメガスってなんだ?ってか誰だ?」
「魔物大量発生の原因、そしてマルディアグを危機におとしいれた張本人ですの!」
「そうか……敵の大将か」
また、ゲイザはそういってからココアを飲んだ。
「いずれ戦うかもしれないな。そいつとも」
「そうですねぇ〜……でも、詳しいことは私もよくわからないですの。
生まれてそんな経ってないですし」
もう一口ココアを飲んで全部飲みきると、ガラス越しに外を見た。
辺りは日が暮れそうになっていた。そのため、空はオレンジ色になっていた。
「そろそろ、宿屋に戻らないとな」
「はいですの!」
そういうとゲイザはテーブルの上にココア代の分のガルドを置いていき、
店を出て行った。
続く
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