第X話 『マルディアグ』


破滅の塔についたゲイザ達。
「また登ることになるとはな」
目的地でもある高い頂上を見上げてゲイザは言った。
塔の天辺が太陽と重なって眩しく見える。
「まあ、とりあえず登らなきゃ意味ないんだし、いこう」
「うん、そうね」
タクスとルベリィは先に破滅の塔に入っていった。
「お前はいいよな。飛ぶか俺の肩に乗ってればいいんだし」
ゲイザは飛んでるラティーを見ていう。
するとラティーはゲイザの頭をポコン、と叩いた。
「そんなこと言わないですの! 飛んでるのだって、羽が疲れるし……」
そういうと飛ぶのを止めてゲイザの肩に乗った。
「しょうがないな。さあ、行くぞ」
ゲイザはそう言って、タクス達から少し遅れて破滅の塔の階段を昇り始めた。

ゲイザ達は最後の階段を昇って最上階についた。
タクスとルベリィは初めて来たが、ゲイザはこれで2回目だ。
「くっ……」
幻が見えた。ゲイザにはドール完全体となったミリアの姿が目の前にいるような気がして
ならない。それほど、あのときの状況が頭に焼き付いている。
「ラティー、よりにもよってここからそのマルディアグって世界にワープしなきゃなんないんだ?」
タクスが辺りを見渡しながら言った。確かにそうだ。
別に他の場所でもいいだろう、とゲイザやルベリィも思っていた。
タクスに質問されたラティーはゲイザの肩から飛んで顎をつまんだ。
多分、ルアグ博士という人の真似だろうか。
「グラティームの世界にはワシは行った事ないからよくわからんが、とりあえず一番高いところから
ワープできるようにリンクしといてやるからの、とか言ってましたですの〜。
要するに、この世界で一番高い建物の頂上にマルディアグに行くための空間を繋いだってわけですの」
「へぇ〜、なるほどね」
タクスはメガネのフレームを軽く上げて頷いた。
「とりあえず、さっさとワープを始めてくれないか?」
タクスの質問が終わったタイミングを見て、ゲイザはすぐさまラティーに言った。
「はい、わかりましたですのー。じゃあ皆さん、1つの場所に固まってくださいですのー。
範囲は直径5メートルの円形で〜」
そういうとラティはその円形の中心の場所だろうと思うところに高く飛び上がった。
「時空よ、空間よ……繋がれ、ですの!」
ラティーは腕を上に上げてそう言うと、辺りが一瞬光に包まれ、ゲイザ達はその光に吸い込まれていった。

光に包まれてから数秒。
ゲイザは目を開けると辺りは普通の木や草が。どうやら森か山の中だろうか。
そして下を見ると祭壇のようなところに立っていた。
「ここがマルディアグか……」
ゲイザはそう呟くと祭壇から降りた。
続いてタクス達も祭壇から降りて、空を見上げた。
「なんだか、わたし達のいた世界とは雰囲気が違うね」
ルベリィは茶色になった枯葉を触った。
「あれ? ゲイザさん。どうやら私……間違ったみたいですの」
「へ?」
困った顔をしているラティー。
そして意味のわからないと言いたいばかりの表情でラティーを見たゲイザ。
「あのですね、ちょっと目的地から離れたところに来ちゃったみたいですの……
で、でも、何とかなる! ですの!」
なんだか自分のミスを紛らわしているみたいだった。
ゲイザは心の中でまあいいか、と言った。
「あ、そういえば、みなさんのいた世界、グラディームとマルディアグの雰囲気、違いますね〜」
話をすぐ変えようとしたせいか、この話題しかなかったようだ。
ラティーがちょっと焦って話してる。
「俺達のいた世界じゃ、葉っぱはこんなふうに枯れないし……」
そういってタクスは足元に落ちていた枯葉を拾い上げていった。
確かに、グラディームでは植物が枯れることはあるけれど、木の葉が枯れるということはなかった。
「あ〜、グラディームには季節がないからだと思うですの」
「季節? なんだそれは」
すぐさまゲイザがラティーに質問をした。
「季節っていうのは、春・夏・秋・冬があってですね〜、今ここは丁度秋の季節なんですよ。
秋になると寒くなってきて、こうやって木の葉さんたちも枯れて落ちていってしまうのですの〜。
ちなみに、秋が段々寒くなって、冬になると物凄く寒くなって、春になるとポカポカになって、
夏になると暑くなるんですの」
ラティー以外の一同はなるほどと頷いた。とてもわかりやすい(?)説明だったためか、
とても理解できた。グラディームに住んでたため、少し違和感があるけど。
「じゃ、そろそろこの山を下るか。ラティー、この先に街はないのか?」
ゲイザはリュックを背負い直し、宙に飛んでいるラティーに質問をした。
「えっとですね、よくわかりませんですの……でも、きっと、ルアグ博士のところにいけそうな、
気がするですの――多分……」
「まあ降りなきゃ始まんないんだし、行こうよ」
タクスは笑ってそう言うと、山を下り始めた。
「そうだな、行こうか」
ゲイザ達は街を目指して山を下り、歩いていった……


続く

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