第W話 『破滅の塔』


「ついたか……」
デュッセル、キシュガル、ファリスの目の前には天にそびえる
大きな塔が立っていた。
「久しぶりだねぇ、この塔。約1年ぶりだな〜。多分」
キシュガルは頭の後ろに手を組んで塔を見上げた。
この世界の大地を削った、この塔。
なんだかこの塔には嫌なものをデュッセルは感じていた。
「平和を乱したこの塔……ここにあっていいと思うか?」
「あん?」
いきなり険しい顔で塔を見上げながらデュッセルはキシュガルに言った。
その問いにキシュガルは片手で頭を掻きながら答えた。
「しょうがないだろ?でも、もう害はないんだろ、この塔。
タクスがファムレイグの王とラムダとか言うやつも殺したし・・・さ」
「ああ、そうだったな……」
しかしデュッセルは拳を強く握っていた。
なんだかわからないけれど、苛立ってくるのだ。
「あの……そろそろいきませんか?」
二人の会話から仲間はずれにされてたファリスは二人の後ろから話しかけた。
デュッセルとキシュガルが振り向いてみると、物凄く困った顔をしていた。
「しょうがないですね、少し説明しておきましょうか」
ふぅ、とため息をしてからファリスはメガネのフレームを上げてから目を瞑った。
「今この世界、グラディームにはモンスターが異常発生しているのを知っていますね?
それは、マルディアグで起きていることが原因なんです」
「一体何が起きているというんだ?」
デュッセルは体の向きをファリスに向けて言った。
「モンスターの異常発生の原因。それはこちらでもモンスターを召還する術を使っている
ものがいるからです。モンスターを召還して、人類を滅亡しようとしている人がいる……
わたくしはあなた達をそのために雇ったのです。まあ、わたくしが雇ったわけじゃないですが」
それを聞くとデュッセルはひとりでに歩き出した。
キシュガルは歩き出したデュッセルの腕を掴んだ。
「どうしたんだよ?」
デュッセルはキシュガルの方を見た。
「俺達がその仕事をすれば……この世界も、マルディアグという世界も
平和になるんだろう?ならば、やるしかない。そう思っただけだ」
そう言うとデュッセルは自分の腕を掴んでいるキシュガルの手を振り払い
勝手に塔の中に入っていった。
「ちょ、ちょっと待てよ! ファリス、いこうぜ」
「そうですわね……」
キシュガルとファリスはデュッセルを追うように塔を登っていった。
1階1階をちらっと見つつ登っていったが、
まったくあのときと変わらない。

気づくと最上階まで来ていた。
なんだか不気味な感じがする部屋だった。
「デュ、デュッセル……」
「うむ、変な感じがする。しかし、逆に暖かいな……」
逆に暖かい、というのは不気味に思っていたキシュガルにもわかった。
「あの……」
ファリスはまた困った顔をして顔を俯いていた。
「ワープを開始するので、ちょっと集まってください」
デュッセルとキシュガルはファリスの言うとおりに一箇所に集まった。
「なぁ、ワープってなんだ?」
キシュガルは頭を掻きながらファリスに質問した。
「あのですね、空間と空間を繋げてその繋げた空間の場所へ飛ぶことです」
「ふむ、なるほど」
顎に手をあてて頷いたデュッセル。正反対でキシュガルは少しわからないような顔をしていた。
「それでは、ワープしますね」
「ああ、頼む」
と、デュッセルの返事を聞くとファリスは目を瞑って腕を上に上げた。
「時空よ、空間よ……繋がれ!!」
そう叫ぶと辺りが光に包まれた。
光が消えたその場には、デュッセル達の姿はなかった。


続く

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