第U]V話 『今、やるべきこと』
ゲイザ達は二人一組のペアーとなり、要塞の4つの入り口から
一組ずつ入っていった。
そして、キシュガルとリュアはサーフォルと戦い、
デュッセルとファリスはサイグとショーンルと戦った。
タクスとルベリィもまた、彼らと同じように通路を進んでいた。
「ねぇ、この通路、長くない? いい加減どっかの部屋についても
いいと思うんだけど……」
この長い通路をとても不審に思ったルベリィが、前を歩くタクスに
言った。するとなぜかタクスは立ち止まった。
立ち止まったことに気づいていなかったルベリィは前を歩いていた
タクスの背中にぶつかってしまった。
「ちょ、ちょっとタクス……いきなり立ち止まらないでよー!
――ねえ、タクス。聞いてる?」
「なんだか嫌な予感がするんだ……」
いつものタクスらしくもない、真剣な声だった。
その言葉をちゃんと受けないで、ルベリィは冗談だと思って笑っていた。
「いいからさっさと行かないと、ゲイザ君たちにも送れを取るわよ。
ほら、早く行こ!」
ルベリィがタクスの背中を押した。
「!?」
「えぇ!?」
タクスとルベリィが共に驚いた。
二人の目の前の床が開いたのだ。
気づいたときにはもう遅く、二人一緒にその落とし穴の
トラップにはまり落ちていった。
「いたたたぁ〜……タクス、大丈夫? あれ、タクス?」
「うぅ……」
二人は落ちた衝撃で少し体が痛んでいたが、落下したところがコンクリートではなく
やわからくてふかふかした土の上だったので、なんとか助かっていた。
しかし、辺りを見渡すと、遠くに互いの姿が見えていた。
そう、落下したとき別々の場所に落下してしまったのだ。
「ルベリィ、どうやらそっちにはいけないようだよ」
それに、目の前にいるのはわかっているが、地面が地割れのため2つに別れている。
並の人間じゃ飛んでも落ちてしまうような距離だ。
「どうしよー……タクス、どうやって上に戻れるかな」
「一応探してみるよ……」
そういってタクスが立ち上がったとき、どこからか人の歩く音がした。
もちろん、タクスやルベリィは歩いていない。
「その必要はないよ」
どこかで聞き覚えのある声だ。
その声の主が暗い闇の中から姿を現した。
ルベリィの方に進む道があったようだ。そこから彼は歩いてきた。
「ザクォーウェル!!」
「憶えていてくれたんだね、嬉しいよ……でも、もうそんなの必要ないよ」
その姿をみて叫んだタクスと、余裕の笑みを浮かべるザクォーウェル。
「さて、君から相手をしてもらうよ」
「ルベリィ!」
ザクォーウェルが腰に下げている二つの鞘から二つの剣を引き抜く。
そして、その戦いを申し受けたかのように、ルベリィもレイピアを構える。
「わたし一人でも戦えるから心配しないで、タクス」
そう言って、タクスの方を振り返る。
「わたしだって、元ネイホ王直々の親衛隊隊長だったんだから!」
笑って、そういった。しかし、タクスはとても不安だった。
とても『嫌な予感』がしていたからだ。
「さあ、やらせてもらうよ……はぁっ――真空闇黒斬!」
ザクォーウェルはその二本の剣で空を切って、黒い斬撃をルベリィに飛ばした。
しかし、ルベリィには予知能力がある。
「見切った!」
左に避けた。
「まだまだ、甘いね」
その避けられた斬撃は二つに分かれ、再びルベリィに襲い掛かってきたのだ。
それを避けるのに戸惑ったルベリィは避けるのも出来ず、斬撃を直撃で喰らってしまった。
「あぁっ!」
「ルベリィ!!」
その場に膝をついて倒れた。そして、すぐ立ち上がったが――
「闇黒術、マインドコントロール」
黒い炎がルベリィの体の中に入り込んでいった。
そして、ルベリィは無言で自分のいる地面からタクスのいる地面へ跳躍して飛んでいった。
「ル、ルベリィ!?」
「無駄だよ。彼女は僕の心で操られている」
「何っ!?」
(嫌な予感がしていたのは、これのことか!)
ルベリィはレイピアをタクスに向けて突き刺す。
「ホントに攻撃してきた!」
すぐさま避ける。そしてすぐに剣を引き抜いたが、ルベリィを攻撃するなんてことは
タクスにはできなかった。
そしてまたすぐに二撃目、三撃目とレイピアの突きがタクスに襲い掛かる。
それを何とかして避けたもの、少しタクスの体を掠っていた。
(どうすれば、ルベリィを助けられるんだ……)
ルベリィの攻撃を避けながらも考えていた。
「ルベリィ、俺だ、タクスだ!」
「無駄だね」
やはり、ルベリィは何も言わないで攻撃をしてくるだけだ。
再び、何か出来ないかと考えた。
(マインドコントロール……もしかしたら、アイツがルベリィを操っているのか?
だから一緒になって攻撃をしてこない――ならばっ!)
何かをひらめいたのか、今度はルベリィの攻撃に対してタクスは剣を構えた。
「いいのかい? 君の大切な人を傷つけることになるよ」
「……………」
「馬鹿なやつめ」
ルベリィがレイピアをタクスに突き刺す。
「はぁぁっ!」
タクスは剣ではなく、鞘をルベリィのレイピアを持っている腕に叩きつけ、
レイピアを落とさせた。
「何っ」
「これで、どうだぁっー!」
すぐさま剣をその場に突き刺し、腰にある銃を遠くにいるザクォーウェルに向けて
雷を纏った銃弾を撃ちつける。
「ぐぅ!?」
それは見事、命中しルベリィの動きも止まった。
「き、貴様っ……よくも! 僕が直々に戦ってやるよっ!」
ザクォーウェルがそう言うと、地割れの間から橋が現れた。
「ふふふっ、殺してやる、絶対にぃっ!!」
「狂い始めた!?」
タクスはその手すりもない橋をわたりかけたとき、ザクォーウェルが剣を構えてこちらに
走ってきた。それを予知したタクスはすぐ避けて、足をかけて橋から落とした。
「……っ……タ、タクス?」
ザクォーウェルとの戦いが終わった後、ルベリィはすぐに起き上がった。
「わ、わたし何してたの? ザクォーウェルは?」
タクスはすぐ起き上がったルベリィの元へ駆けつけた。
「終わったよ、ザクォーウェルとの戦いは……でも――まだ残ってる。
俺たちのやるべきこと……ゲイザ達はまだ戦ってるんだ。早く上に戻って
助けに行ってあげないとな」
「うん、そうね」
そしてタクスとルベリィは上にあがり、再び長い通路を歩き始めた。
続く
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