第U]話 『暗い空』
朝。
ゲイザ達は起きてホテルの外に出ていた。
「ちょ、これは寒すぎじゃない?」
「まったくだよ。だからアタシ、秋と冬が一番嫌いなんだー」
リュアとキシュガルは体を温めるように両手で自分の腕を摩った。
「そろそろ、雪が降りそうですね……」
どこか心配そうに、ファリスは雲行きが怪しい空を見上げて
白い息を吐いてそういった。
「うむ、今は寒いなどといっている状況ではない。
ディメガスのいるディスペクタルの要塞へ一刻も早く行かなければ」
いつもながら、デュッセルは全員に冷静な言葉をかける。
しかし、寒いものは寒い。それは仕方がないことだ。
多分、気温はマイナスを行っているかもしれない。
「んで、俺達はどうするの? ゲイザ」
「そうだな……とりあえず、その要塞へ向かうために必要な船だが――」
タクスとゲイザが二人だけで話し合っているとき、ごく普通な男の人が
近づいてきた。
「あのぉー、あなた達がディメガスを討伐する方達ですか?」
「と、討伐……まあ、そんなところですが」
ゲイザは討伐、という言葉にちょっと違和感を持ったが、確かに倒すのを目的に
しているので、討伐であっている。
「私、ルアグ博士に船を貸すよう言われてまして……」
(準備がよすぎる)
ルベリィが心の中でつっこむ。
口に出したい気持ちがあったが、あえて心の中で言っておいた。
「じゃあその船のところまで案内してくれないか?」
ゲイザはその男に言うと、男はゲイザ達に背を向けて歩き出す。
そしてゲイザ達もその男について行った。
連れてこられた場所は港だった。
そして男は、自分の船があるところまで連れて行ってくれた。
「それでは、私はこれで……あ、使い終わったらまたここに戻しておいてくださいね」
それだけいうと、男はどこかに消えてしまった。
「とりあえず乗り込みましょう」
イルアがそう言うと、全員は貸してもらった船に乗り込んだ。
大きさはそんなに大きくないので、全員立っていることにした。
「んで、誰が運転するの?」
ルベリィが辺りを見渡していう。
すると一人、手を上げていた。
「わたくしが船を動かしますわ。昨日ルアグ博士に操作を教えてもらったので」
(やっぱり準備がいい!)
またもやつっこみ。
昨日ルアグ博士はファリスに船の操作方法を教えていたのだ。
多分、これは全てルアグ博士の仕様だ。
「それじゃ、レッツゴー!ですの」
ラティーの声と共に、ゲイザ達は船でディスペクタルの要塞へ急いだ。
船で先ほどの港町からみなみに移動したところにディスペクタルの要塞はあった。
30分もかからない内に、それらしき大きな建物が見えた。
そして、ゲイザの不安も少しずつ増していった。
とても安心とはいえない。いくら仲間が多いからって言っても、魔晶石を何らかの形で
破壊や使用されたら、イルアの命はもうないに等しい。
そんな不吉なことを思っている間に、もうディスペクタルの要塞についてしまっていた。
「ここがディスペクタルの要塞か……」
ゲイザはその大きな建物の前で呟いた。
とても大きなドーム状の建物。縦は破滅の塔に劣るが、横幅は今までみた建物を
遥かに超している。
「なあ、この建物入り口が4つあるぜ」
キシュガルは目をその入り口に向けていった。
確かに4つある。
ゲイザは少し考えた末、でた答えは
「メンバーを4グループにわけよう」
そしてゲイザ達はメンバーを1グループ二人を4つ作ることにした。
「タクスとルベリィ。キシュガルとリュア。デュッセルとファリス。
そしてイルアと俺とラティーだ」
全員に向かってゲイザがそう言うと、それぞれ別れて、別々の入り口に入っていった。
「ねぇ、なんで誰もいなんだろうね」
「オレがしるか!」
いつもながら、何気ない会話をしているキシュガルとリュア。
しかし、敵の庭の中に入っているというのに見張りなどがいないのにとても疑問を持っていた。
「ホントに不気味だよー……」
怖がっているリュアはキシュガルの腕を抱くように掴んだ。
「って、オイ! そんなにベトベトくっつくなっつーの!」
「いいじゃん、別にぃー。そんなにケチケチちないの!」
「そういう問題じゃねーだろう!」
「………………」
「おい、どうした?」
いきなりリュアが黙り込んだ。
キシュガルはリュアを見たが、何も言わずただ何かを見つめているようにしか見えなかった。
そしてキシュガルもその何かを見てみた。
気がつくと、リュアとキシュガルの前には洞窟で戦った四天王の一人、
サーフォルがいたのだった。
「!? テメェ、いつからここに――」
「ついさっき、だ。それにしてもリュア? とっても楽しそうじゃないか……
助けてもらった男の腕にしがみついちゃってさ」
「………………」
サーフォルの言葉を聞いたリュアは、未だにキシュガルの腕にしがみ付いてるが、
先ほどと違って掴んでいる手が、微かに震えていた。
リュアはサーフォルに恐怖心を抱いているのだ。
「なんだい、せっかく挨拶してやってんのに、怯えなくたっていいんじゃない?
ふふふふふ……」
「黙って聞いてりゃ――」
キシュガルは怒りを抑えられなくて、槍を構える。
「いい気になりやがって!」
怒りを纏った声は、通路に響いた。
その声を聞くとサーフォルはにやりと片方の口元を上げると、
鞭を片手に持った。
「そうこなくっちゃねぇ……こっちも、ディメガス様の命令でお前らを始末するように
言われてるのさ。ま、戦うなら本気でやらないと面白くないしね」
「リュア、下がれ! ここはオレが戦うから!!」
リュアを後ろへ下がらせると、キシュガルは槍を構えてサーフォルに向かっていった。
続く
FC2 | キャッシング 花 | 無料ホームページ ブログ blog | |