第U話 『依頼主』


商業の街プロマーグ。
そこにデュッセルとキシュガルは来ていた。
彼らは平和のため、困っている人がいれば何でも依頼を引き受ける
仕事をしていた。いわゆる傭兵みたいなものだ。
プロマーグは一見平和そうに見えるけれど、1年前の
災害で石で出来た道は割れて、木は折れていたりとひどいの一言だ。
それもそのはず、プロマーグは一番攻撃をくらった街だ。
他にも酷いところはあるけれど、ここが一番酷いらしい。
「なあ、デュッセル。今回の仕事さー」
キシュガルは両手を頭の後ろに組み、歩きながらめんどくさそうに空を見ていった。
「めんどくさそう、か?」
「あぁ、まあ、そんなところ」
「勘で物事を簡単に決めるな。まだ仕事の内容もわからないんだぞ?
依頼主の所へ急ぐぞ……」
その二人が引き受けた依頼の主は宿屋にいるという。
なので二人は宿屋へ向かっている途中だった。
「ちょ、タンマ――なんか嫌な予感するぜ」
キシュガルは槍を構えた。
辺りは逃げる人々。その人々の後ろを見るとモンスターがいた。
鳥系の魔物が3匹、スライム系の魔物が4匹。
それを見たデュッセルも大剣を構えた。
「うむ……モンスターが大量発生してるとは聞いたが、
街の中までにも出現するとは!」
「いいから、早いとこやんないとやばいって!」
「そうだな。いくぞ、キシュガル!!」
二人は魔物に向かって武器を構え走り出した。

「一段落ついたか……」
「そうみたいだな」
周りを見渡す限りではモンスターはもういないようだ。
「早いところ、依頼主のところへいかなければ……」
「ああ、なんてったって、約束の日から1日遅れてるからなぁ」
二人は武器をしまい、宿屋に向かった……

「ファリス=クォートンはこちらか?」
デュッセルは宿屋の部屋の扉を開けた。
そこには、メガネをかけ、白いドレスのような
白衣を着た美しい女の人がいた。
「待っていましたよ。デュッセルさん、キシュガルさん……」
ファリスは椅子から立ち上がり、微笑んだ。
「1日約束の日にちに遅れたことはすまなかった」
デュッセルは深々と頭を下げた。
「いえいえ、良いのですよ、それくらい。それより、椅子に座ってくださいな」
用意された2つの椅子にデュッセルとキシュガルは座った。
ファリスもまた、空いた椅子に腰をかけた。
「それで、依頼ってなに?」
ちょっとめんどくさそうにキシュガルはファリスに聞いた。
「わたくしの住む星を、救って欲しいのです……」
「星?」
デュッセルとキシュガルはわからないと言いたげな顔をした。
星といわれても、今いる世界以外に星はない。
そして、この世界だったとしても十分平和だと思っている。
「ここではなくて、もう一つの星――わたくしが住んでいる星、
『マルディアグ』に危機が訪れようとしているのです。そこで、あなた達に……」
「マルディアグ? この世界のほかにも、他にあるってこと?」
キシュガルは興味津々な様子で聞いた。
「そうですね。あなた達の住む星はグラディームといわれています」
「ほう……俺達がマルディアグという星へ行きその世界を平和にして欲しい、と?」
顎に手をあて、デュッセルは言った。
「あなた達にしか、わたくしの依頼は出来ません・・・お願いします」
ファリスは深く頭を下げた。
「もちろんだ」
「ちょっと、デュッセル! そう簡単に決めていいものじゃないだろ!」
「忘れたか、キシュガル? 平和のために剣を振るうと言ったのを」
「そ、そりゃそうだけど……あー、もう! わかったよ……やってやるさ!」
結局、キシュガルもOKを出して、その依頼は引き受けることとなった。
「ありがとうございます! それでは、今から向かいましょう」
「って、どっからいくんだ!?」
ビックリしてキシュガルが椅子から立ち上がった。
「あの、大きくそびえる塔の最上階からです」
ファリスが宿屋の部屋の窓から破滅の塔を指差していった。
「ふむ……再び、あの塔へ行くこととなろうとな」


続く

FC2 キャッシング 無料ホームページ ブログ blog