第]Y話 『剣の誓い』
デュッセル達はルアグ博士の依頼である魔界結界壁自動装置改を
近くの街2つに設置するというものだった。
それで、設置が完了したのでリュアを新たに仲間にした
4人はルアグ博士がいるレスコォールに戻ることにした。
「博士〜、ただいま戻りました」
ファリスを先頭に、研究所の入り口のドアを開けて入った。
すると、机に向かって何やら研究していたルアグ博士はデュッセル達に気づき
腰をかけていた椅子から立ち上がった。
「おぉ、ようやく戻ってきおったか……しかも一人ちっこいのが増えとるな」
「ちっこいの……ってアタシ!?」
リュアは自分を指差して大げさにリアクションをとってから
顔を膨らませた。
「いきなりちっこいなんて酷い!」
「あははっ、まあ確かにちっこいな」
すこし調子に乗ってキシュガルは隣にいるリュアの頭に手をポンと乗せた。
それに怒ったリュアはキシュガルの方を向き、腕を振り回した。
「ひっどーい!酷すぎるっ!!」
「おいおい、お前らそれくらいにしておけ」
呆れ顔で腕を組んでいるデュッセルはため息をつくと
ルアグ博士の元へ歩いて行った。
「ルアグ博士。魔界結界壁自動装置をセントグラームとデュグラムに設置してきました」
「おぉ、そうかそうか……今日は適当に休んでくれ――それとファリスや、
少し話があるのだがいいかね?」
「はい、いいですよ博士――それじゃ、デュッセルさん達は適当にくつろいでて下さい」
ファリスはそういってデュッセル達に頭を下げると、ルアグ博士と共に研究室の奥に続いている
部屋に入っていった。
残された3人は少し沈黙し、少ししてからデュッセルが大剣を背中に背負った。
「キシュガル、リュア。好きなところに行ってろ、自由行動だ。俺は少し風に当ってくる」
そう言うと、ドアを開けて外に一人で出て行った。
そして部屋に残されたのはキシュガルとリュア。
また嫌な雰囲気の沈黙がはしった。
「ねぇ、キシュガル」
「あん?」
「暇」
「オレが知るかよ」
「ひぃ〜まぁ〜!!」
「……わかったから、大きい声だすなって」
リュアがキシュガルの耳元で大きい声を出した。
さすがにそれに呆れたキシュガルは、デュッセル同様外に出ようとした。
「外いこうぜ」
チラッとリュアの顔を振り向いて見てから、外に出て行った。
「うん!」
と大きく頷き、リュアはキシュガルの後ろをついて行った。
「寒っ……」
外はすっかり暗くなって、寒くなっていた。
寒いのが苦手なキシュガルは自分の体を自分の両腕で抱えるようにして
体を暖めた。
それから二人は、研究所から少しはなれたところまで歩いた。
「あ、そういえば……もうそろそろ冬だね」
「冬? 冬ってなんだ?」
冬がわからないというキシュガルの疑問にリュアはビックリした。
無理もない。キシュガルとデュッセルがグラディームという世界から来たなんて
いっても彼女にはわからない。
リュアは目を閉じてため息をつくと、息が寒さの性で真っ白だった。
「冬ってのはね、季節の中でも一番寒い季節なの。まあ、当たり前のように雪だって降るし、
水たまりにも氷が張るし……」
「えぇ……そんなに寒くなるのか? カンベンしてくれよぉ〜……」
キシュガルが白い息を吐いてため息をついた。
しかし、そろそろ寒さにも慣れてきた頃だろう。キシュガルは体を温めるように
していた両手を解いた。
そしてリュアは冬について質問したキシュガルに、質問し返した。
「ねぇ、なんで冬って季節知らないの?」
「あ、そういやリュアにはいってなかったっけ」
そう言ってキシュガルは頭を掻いて薄暗くなった空を見上げた。
「オレとデュッセルは季節のない世界、グラディームってところからこのマルディアグに
来たんだ。」
「なんで?」
「依頼で」
一言で返されたことに少々リュアは不満を感じ、再び質問をした。
「なんて依頼なの? あなた達は何をしてるの?」
今度はちゃんとした答えを待つように、キシュガルの目の前に行き、目を見た。
リュアはリュアなりに、ついていくからには聞いておかなければいけないと思ったのだろう。
キシュガルは観念したかのようにまた白い息を深く吐いてその答えを言った。
「マルディアグの危機を救うため、オレたちがファリスってか、ルアグのじっちゃんに依頼されて
オレはルアグのじっちゃんに言われた任務をしてるんだ」
今回はちゃんとした答えが返ってきたことに、少し安心し、リュアは空を見て、キシュガルの方を
見ないで笑った。
「それじゃ、敵だったアタシも、それに協力してもいいの?」
それを聞いたキシュガルは「ぅ」と小さく声を漏らしてから今度は息を深く吸って、
また白い息を吐き出した。
「今は見方なんだろ? 薄気味悪いこというなよ」
そういわれたリュアはキシュガルの方を振り返り、舌をだして笑った。
「えへへ、ごめんごめん」
「ま、いいけどさ」
キシュガルもその笑いにつられるかのように、笑った。
「うむ……寒いな」
デュッセルはというと、研究所の屋根のところに座っていた。
特にすることもないので風に吹かれて考え事をしていた最中だった。
デュッセルが外を出てから、数十分経っていた。
秋という季節の終わりに吹く寒い風に当りながら考え事など、できるわけがなかった。
と、そのとき、下から研究室のドアの空く音がした。
「デュッセルさん達、どこにいったのかしら……」
ファリスだった。デュッセルには気づかないまま、辺りをうろついていた。
「ファリス、どうした」
後ろから聞こえる自分を呼ぶ声にファリスは気づくと、デュッセルの方を振り向いた。
「デュッセルさん! ――ちょっと降りてきてもらえますか?」
「うむ、わかった」
そう言うとデュッセルは屋根から何の躊躇いもなく飛び降りた。
そしてファリスのいる所まで歩いていった。
「すみません、デュッセルさん。わざわざ呼んでしまって」
「気にするな。それで何のようだ?」
「いえ、用って程でもないのですが、少しお話がしたくって……」
「うむ、なんだ?」
ファリスはデュッセルにそういわれると、デュッセルの視線を目から外し、
空を見上げた。
その見上げた空には、星が1つだけ出ていた。
「デュッセルさん、世界を平和にしたいっておっしゃってましたよね……
なんで世界を平和にしたいよ思ったのですか?」
デュッセルも腕を組んで星を見上げるため空を見た。
「俺には戦うこと意外、何も出来ない。それに今の俺には守る『者』がない……
だから俺はせめて人々のために平和を守ることにした」
「平和はいつまでも続かないんですよ? それでも、デュッセルさんは自分の身を危険に
さらしてまで平和を守りたいんですか?」
ファリスに攻めるように言われたデュッセルは、無言で背中に背負っている大剣を手に取った。
「俺はこの剣に誓った。俺が今、大切だと思う『モノ』を守ると……俺が今、大切だと思っているもの、
それは『平和』だ」
デュッセルがそういうと、少しでファリスは黙り込んだ。
「デュッセルさんはやっぱりすごいですね……」
そういうとファリスは無言で研究所へ戻っていった。
「お、おい、ファリス!」
デュッセルはファリスを追うように走っていった。
続く
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