第]T話 『新たな力と眩しい光』


炎に呑まれた村の中で、ゲイザはディガメスと――タクスとルベリィは
ザクォーウェルと戦いの時を迎えていた。

ルベリィがレイピアを構えて今にも攻撃していきそうな構えをしていた。
タクスもその言葉に頷き、剣を両手で構えた。
「僕の名前はザクォーウェル=ジュフォム。
さぁ、二人まとめて相手をしてあげる……かかってきな」
ザクォーウェルと名乗った男は挑発をするかのように目を大きく開いて
にやつきながら右手の中指を突き出していた。
「でぇぇい!!」
ルベリィがレイピアを構えてザクォーウェルを目掛けて走り出す。
「そんなわかりきった攻撃で、僕を殺せると思っているのかい?」
そういうとザクォーウェルは宙に飛び上がりレイピアの突きを回避した。
それは一瞬の出来事だった。タクスもルベリィも、レイピアでザクォーウェルの
腹部をレイピアで貫通したように見えた。
「なんだい? もしかして当たったかと思った?――でも残念だったね」
宙に飛び上がったままそういうと、ザクォーウェルは両手に持っていた剣を
下にいるルベリィに向けて突き出した。
「ひと思いに殺してやるよ!」
そのままザクォーウェルがルベリィを目掛けて落下する。
そしてルベリィに2本の剣が突き刺さる――
はずだった。しかしタクスが間一髪のところでルベリィの体を抱えて
剣が突き刺さる落下地点から吹き飛ばすような形で回避した。
「チッ」
ザクォーウェルは舌打ちをしながら地面に突き刺さった2本の剣を抜いた。
「お前の相手は俺がしてやるよ! ザクォーウェルとかいうやつ!」
ルベリィと共に倒れていたタクスは起き上がり、剣を両手で持ちザクォーウェルを睨んだ。
「うぅ……タクス――わたし」
「いいから、ルベリィは見てて。俺はこいつを倒す」
ルベリィは倒れたままタクスを見上げた。
タクスのおかげでルベリィは打撲ですんだが、もしもタクスが助けてくれていなかったら
死んでいたことだろう。
「ま、君を殺してから後ろにいる女も一緒にあの世に送ってやるから安心してよ」
「そんなこと絶対にさせるもんか!!」
「へぇ――その自信はどこからくるんだか……お前、絶対に助からないから」
そういってザクォーウェルもタクスを睨んだ。
両者ともにらみ合う形となっていたが、ザクォーウェルが先に動き出した。
「一瞬で殺してやるよ」
両手に持った2本の剣のうちの1本をタクスに向けて投げた。
その剣は直線を描くように真っ直ぐタクスを目掛けて飛んでいった。
「そんな攻撃、当たるものかっ!」
そのとき、タクスの脳内でザクォーウェルの次の行動が脳裏に浮かんだ。
(次、来るっ!)
タクスを目掛けて飛んできた剣をしゃがみ込んでかわし、目の前を見ると
ザクォーウェルがすぐ近くに来ていた。
「さぁ、これで終わりだ!」
「見切った!」
ザクォーウェルがタクスを目掛けて剣を縦に振り上げる。
その攻撃はかわす事は不可能な一撃だった。
しかしタクスは一歩後退し、その攻撃をかわしたのだった。
「なにぃ!?」
タクスは後退した後、剣を横に構えて魔力を剣に込めた。
「風よ!」
ザクォーウェルを目掛けて剣を横に振ると竜巻が起きて
地面を削り、ザクォーウェルを宙に飛ばした。
「大地よ!」
タクスた竜巻の中央の地面に剣を飛ばすと地面は割れ、
竜巻に割れた地面が巻き込まれる。宙に浮いたザクォーウェルは
割れた地面の欠片に体を打ちつけられる。
「雷よ!!」
次に腰に掛けていた銃を右手に取り、地面に突き刺した剣に
銃口を向けた。体内にある雷のマナを銃に集めて、剣に撃ちつける。
金属製の剣に当たり、雷の弾は宙に浮いているザクォーウェルを撃ち抜いた。
「とどめぇっ! エレメンタルブレイカー、シュートォォォッ!!」
体内の全属性のマナを銃に込める。
そして銃口を宙で絶句しているザクォーウェルに向けてトリガーを引いた。
赤、紫、緑、茶色の銃弾が4発発射され、全てザクォーウェルに命中した。
タクスの秘奥義を受けたザクォーウェルは落下し地面に叩きつけられる。
「やったか? ――なに!?」
止めを刺したと思ったタクスは立ち上がるザクォーウェルを見て驚いた。
しかし立っているのがやっと、といったところだろうか。
「今回は見逃してやる――次はないからな」
そういってザクォーウェルは光に包まれてその場から消えていった。

「フフフッ――それじゃ、自己紹介も終わったところで……
消えてもらいましょうかね」
ディメガスは鎌の先端をゲイザに向けると、悪魔のような笑いを見せた。
燃える炎を辺りに、ゲイザとディメガスは刃を向け合う。
「そぉらっ、くらいなさい!」
ゲイザを目掛けてディメガスの鎌が飛んでくる。
当たったら当った体の一部が斬られて吹き飛んでしまうぐらいの威力はありそうだった。
(避けたら、あの子に当ってしまう!)
そう、ゲイザの後ろにはディメガスに狙われている少女とラティーがいるのだ。
避けてしまっては取り返しのつかないことになってしまう。
「うぐぅっ!」
ゲイザは飛んでくる鎌を剣ではじき返そうとしたが、
それも虚しく剣をすり抜けて通っていってしまった。
――しかし鎌は何かに弾かれてディメガスの元へと戻っていった。
「何だと……光の力が私の鎌を弾いただと?」
鎌が当る瞬間、ゲイザの目の前に光の壁が出現したのだ。
その光の壁が鎌を弾き返した。ディメガスは悔しそうな顔をしてゲイザを睨んだ。
「次はこっちから行くぞ!――ラティー、お前は下がってその子を守ってろ!」
「はいですの!」
ゲイザはそう言うと光の剣『ラスガルティー』を両手で構えて走り出した。
ディメガスもそれを見て、鎌を片手で持ち、走り出した。
二人が目の前にいたとき、ラスガルティーの刃と鎌の刃が交わり鍔競り合いになる。
「でやぁぁっ!」
ゲイザは両腕に力を入れ、何とかディメガスの鎌を弾き返そうとした。
しかしその鎌も、ディメガスもピクリとも動かず、ディメガスの顔には笑みさえこぼれていた。
「中々やりますね――ですが、私には敵わない、ということを知っておいてもらいたいですね」
鎌を持っていないほうの手をゲイザに向ける。その手のひらには黒い球体が出現し、
その球体は人の握りこぶしぐらいの大きさになっていた。
「シャドウボールッ!!」
ディメガスの左手のひらから黒い球体がゲイザを目掛けて飛んだ。
その黒い球体はゲイザの腹に当たり、その腹をえぐる様に飛び続け、
やがて黒い球体はゲイザの腹で破裂すると、ゲイザは吹き飛び、燃えている家の壁に
叩きつけられた。
「うっ……まだ、だ」
ゲイザはラスガルティーを支えにして痛みを堪えつつ立ち上がった。
「俺は、ここで――ここでお前に負けられないんだよっ!」
そのとき、首に下げていたミリアのペンダントが眩しい光を放った。
その光は、ゲイザを中心に当たりを包み込んだ。
「くっ、この光は……!?」
ディメガスは片腕で眩しい光を遮りながらゲイザを見た。
「暖かい、光――何、これは……」
少女は光の中、立ち上がりゲイザを見つめてそう呟いた。
そして光が消えた後、ゲイザは当たりを見回すとディメガスの姿は見えなかった。


続く

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