第]話 『平和を守る剣』
新たな決意をしたデュッセル。
デュッセル達は魔界結界壁自動装置改をセントグラームとデュラグムという
街に設置する任務をルアグ博士からうけた。
あれからすぐにデュッセル達はレスコォールを出て、西にある
セントグラームという街へ向かったのだった……
「ここがセントグラームか。なんだか騒がしいな」
デュッセルはセントグラームと思われる街の入り口でそう呟いた。
辺りには人はいないが、遠くから微かに人の叫び声などが聞こえる。
「もしかしたら――もうこの街にモンスターが侵入してきてるのかも
しれません。デュッセルさん、キシュガルさん……わたくしは街の中央にいき
この魔界結界壁自動装置改を設置してきますので、モンスター撃破のほう、
よろしくお願いします!」
そういってファリスは魔界結界壁自動装置改を両手で持って街の中へ駆けていった。
「そんじゃ、ひと働きしますか」
「そうだな……」
デュッセルとキシュガルもそういって街の中へ駆けていった。
「ひ、ひぃーっ、だ、誰か助けてくれぇーっ!!」
デュッセルから少しはなれたところにベア系のモンスターが
街の人を襲っている。
「くっ、やらせん!」
それを見たデュッセルは聖断刀をいう愛用している大剣を両手で持ち、
その場で思いっきり縦に振り上げて空を斬った。
「聖断刀・真空斬りぃーッ!!」
空気を斬った斬撃はそのモンスターを切り裂いた。
デュッセルからそのモンスターの距離は少しだが、大剣の届く範囲ではなかった。
真空が刃となり切り裂いたのだ。
「あ、ありがとうございます!」
さっき殺したモンスターに襲われていた街の人がデュッセルに駆け寄りそういった。
「礼には及ばん――しかし、このモンスターは次から次へと……切がないな」
デュッセルが辺りを見回していった。
「先ほどのモンスターは街の中央にいる少年が操っているのです」
「何……操っている? しかも街の中央でか?」
モンスターを操っている、そういうことなら話は早い。
その操っている者を倒せば、モンスターは出現しなくなる。
しかし、街の中央から出現してるとなれば――ファリスが危ない。
デュッセルは聖断刀を片手に、街の中央の方へと走り出した。
「あ、あなた達は……四天王ですね!?」
ファリスは魔界結晶壁自動装置改を左の脇に抱え、街の中央に立っている少年二人を見た。
一人は背も小さく、ルアグ博士が着ている科学者の白衣を着ている。
もう一人は鎧を身にまとい、その人の身長の二倍はある薙刀を片手に持っていた。
「へぇ、その装置、モンスターを街に入れないために張ってある結界を強化するやつでしょ」
背の小さい少年は笑ってファリスの脇にある魔界結晶壁自動装置改を指差した。
「だけど、そうはいかないよ。サイグ、やっちゃってよ」
「……ああ、わかった」
サイグと呼ばれたもう一人の少年は薙刀を振りかざし、ファリスに一歩ずつ近寄った。
「悪く思わないでくれ、好きでやってるわけじゃないんだ」
「あ、あぁっ!」
薙刀が、ファリスに向けられる。
その刃が横に薙ぎ払われようよしたとき、何かがその薙刀を弾いた。
「ファリスには、触れさせんっ!!」
「何っ!?」
デュッセルがファリスの前に立って聖断刀を構えていた。
間一髪といったところで、デュッセルの聖断刀がサイグの薙刀を弾いたのだった。
「サイグ、何をやっている!その男もろ共殺してしまえっ!」
少年がサイグに向かって叫ぶ。その叫んだときの怒った顔が、一瞬にして凍りつく。
――目の前に槍を持った少年が立っていたのだ。
「うっせーな。お前の相手はオレがしてやるよ!」
キシュガルが民家の屋根から小さな少年の前に降りてきていた。
ウインドランスを両手で持ち、槍使い独特な構えをして少年を睨みつける。
「ショーンル様と戦うっていうのかい、君は……そんなの、100年早いよ!!」
ショーンルと名乗った少年は両手を突き出して呪文を唱える。
「我がしもべ達よ、主の命に答えよ!」
魔方陣がショーンルを囲むように出現する。
そしてその魔方陣を囲むように、ベア系のモンスターが6匹出現した。
「うぉ!? デュッセル、そっちは頼んだ!――こっちはこっちでやらせてもらうからさ」
「貴様、何者だ!」
サイグがデュッセルに向かって薙刀を構え、睨みつける。
デュッセルは聖断刀を両手で持ち、先端を上に向ける。
「我が名はデュッセル=ウィルガイア。
平和を守る、剣なりっ!!」
そういうとデュッセルは聖断刀を片手で持ち、空を薙ぎ払う。
「平和だと!? そんなものっ」
薙刀を構えてデュッセルを目掛けて走り出す。
しかしデュッセルはその場から動こうとせず、ただサイグがこちらへ来るのを見ていた。
「そんなもの――笑わせる!!」
力任せにサイグはデュッセルに薙刀を振る。
その薙刀の刃はデュッセルの頭を掠った。だが一歩も動いていないはずだった。
「当らない!?」
驚いたサイグは焦りを覚え、その場から三歩分後ろへ下がった。
「怒り、迷いを抱えているお前に、俺は倒せん!」
「なんだと!? ふざけるなぁっ!」
サイグはデュッセルの放った言葉に怒り、薙刀を横に振りかざす。
次に縦に振り、さらに斜めに薙ぎ払う。
しかしその攻撃は全てデュッセルにはあたらなかった。
「何故、当らないんだ!」
「隙ありっ!」
デュッセルは大剣、聖断刀を横に構える。
そして地を踏み蹴り気づいたときにはサイグの横を通りすぎて後ろに立っていた。
「聖断刀・幻影斬一文字斬りーっ!!」
そうデュッセルが叫ぶとサイグの身に着けていた鎧が粉々に砕かれ、サイグがその場に倒れた。
すると、その場からサイグは光に包まれて消えていった。
キシュガルはモンスター六匹と少年一人を相手にしていた。
「うらぁぁっ、くらいな!」
槍――ウインドランスを次々にモンスターに突き刺し、一撃で殺していく。
あっという間にショーンル一人だけになってしまった。
「ちっ、日が悪かったようだ……」
そういうと光に包まれて、ショーンルは消えていった。
「キシュガル、無事か?」
デュッセルはキシュガルの元へと駆け寄る。
するとキシュガルは笑って右腕を突き出し親指とつき立てた。
その様子だけみるとデュッセルは大丈夫だということを確認し、ファリスの方を見た。
「ファリス、早いところその魔界結界壁自動装置改を設置するんだ」
「わかりました」
そういってファリスは小走りで街の中央の印である噴水に向かった。
噴水の近くの地面に魔界結晶壁自動装置改を置くと、勝手に起動した。
「これで、この街には魔物が入れなくなりました」
と言い、デュッセルとキシュガルに微笑んで見せた。
「しかし、さっきのヤツらみたいに人が街に入ってきて結界壁の中でモンスターを
出現させたらどうなるんだ?」
デュッセルは起動した魔界結晶壁自動装置改を見ながらファリスに聞いた。
「あ、それはですね、この魔界結晶壁が張られたことによりモンスターはこの中に入った
瞬間にして消滅してしまう仕組みになっているんですよ」
「へぇ〜、ルアグ博士もすごいもん作るじゃん」
キシュガルは魔界結晶壁自動装置改を見た。
「うむ、次はデュラグムという街だな」
デュッセルたちはセントグラームを後にし、デュラグムという街を目指した……
続く
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