第][話「闇」
ゲイザ達はイファムの宿屋で一晩休んでから刹那の洞窟を
目指した。ミリアも完全ではないが歩けるほどの体力は回復した。
次の精霊は闇。闇の精霊ディアライガ。
この精霊はドールを嫌っている。ゲイザはその事を心配していた。
もしもドールの存在を許してくれなかったら、マイはどうなる・・・
そんなことを思いながらも、刹那の洞窟についた。
「ここが刹那の洞窟か……」
ゲイザは刹那の洞窟の入り口と思われる穴を見た。
あんまり普通の洞窟と変わらないと思われるが、微かに邪の念をゲイザ達は
感じていた。
「ちょっと、嫌な感じがするね、ここ……」
ミリアは少し目まいがして、倒れそうになったがゲイザが支えてあげた。
「光の壁もあるのですから、闇の壁もあるでしょうね」
たしかに、闇の壁もあってもおかしくはない。
ということはミリアは刹那の洞窟には入れない。
「じゃあ、私はここで待ってるね。マイちゃん、頑張ってね」
ゲイザとマイはミリアに見送られながら暗い洞窟の中に入っていった。
暗い洞窟では何も見えなかったが、ゲイザも持つ聖剣ラスガルティーの
光のおかげでなんとか目の前が見えるほどの明るさになった。
「なんで光っているんだ? この剣」
「多分、闇の力に反応してるからだととおもいます。」
「まあ、とりあえず奥に進もう。それからだ」
二人は洞窟の奥を目指した。
すると洞窟の奥には真聖の神殿にあった祭壇があった。
「うっ……闇の魔力?」
ゲイザには確かに感じられた。物凄く強い闇の魔力が。
すると、闇の中から人が出てきた。いや、詳しく言えば人の形をした精霊だ。
「何ヲしに来タ。光ト闇ヲ持つ少年と闇のドール」
目の前に現れたのは闇の精霊ディアライガ。
髪は無造作に長く乱れていて、紫色。目の色は赤。口からは牙が出ている。
闇、悪を象徴した姿なのだろうか。
「闇の精霊、ディアライガ! ドールはこの世界に存在していいのか、
俺達は聞きに来た」
それを聞くとディアライガは失笑した。
「フッ。オレはドールが嫌いダ。しかし、返答次第デは許シてやっても
構わん。光の精霊は許シテくれたミタイダしな」
「返答次第? ディアライガは俺達に何が聞きたい?」
ディアライガは赤い目をゲイザに向けていたがマイの方に向けた。
「オマエは、なぜ存在シタイ。そして何をシタイ?」
「ワ、ワタシは……」
珍しくマイは黙り込んでしまった。
「どうした? 答エも言エナイのか?」
「ワタシは!! ワタシは、存在したい……
ワタシ達ドールは心を持っていたいと言った。ワタシもそれを望みました。
何故だか、わかりますか? 今までのワタシにはわからなかったけど、
今なら、わかります」
マイは真剣な表情でディアライガを見ていた。
ディアライガもまた、何も言わずにマイを見ていた。
「ワタシは笑うことは少ないけれど、感じることができる。
人の温かさ、冷たさ――心がなければわからないことばかりです。
それと、心を持っていることで人を愛することもできます」
そういうと、マイはちょっとゲイザを見て再びディアライガの方を見た。
「それが、ワタシの答えです」
「ソウカ……ならばソノ想い、力で表シテみろ」
ディアライガは鎌を持ち、ゲイザとマイを見た。
「マイ、来るぞ――準備はいいか?」
「いつでも、いいです」
ゲイザは聖剣ラスガルティーと小刀を構え、マイはカードを持って腕にある
カードシューターにセットした。
「闇ニのまれろ、デス・スラッシュ!」
ディアライガは闇の中に消えてゲイザの後ろに回りこんで鎌で斬りつけた。
「見切ったぁっ!」
ゲイザは闇の魔力を感じ取り、ディアライガの居場所を把握していた。
そして横に振られた鎌をラスガルティーで受け止めていた。
「マイ! 今だ!」
マイは光の属性がついたカードをシューターにセットし、ディアライガに向けて
発射した。すると見事にディアライガに命中して、よろけた。
「ゲイザさん、そのラスガルティーにワタシの闇の魔力を送り込みます」
そういうと胸にかけているペンダントに魔力を集中し、ラスガルティーに
闇の魔力を送り続けた。
「なぜ、光の剣に闇の魔力を?」
「光と闇をあわせれば、どんな攻撃よりも遥かにすごい破壊力を生むといわれています」
そしてマイは詠唱をやめ、ディアライガの姿を追った。
「そこっ!」
一瞬、ディアライガが見えた。そのときマイはカードをディアライガに向けて
発射した。
「グァァァッ!」
「ゲイザさん、今です!」
ゲイザはラスガルティーを構え、ディアライガを目掛けて走った。
「てぇぇぇぃ!!」
斬りつけられた瞬間、ラスガルティーから物凄い光が放たれ、同時に闇の魔力も
放たれた。
光が収まって当たりが見渡せるようになったとき、ディアライガは無傷で
立っていた。
「オレの負ケだ」
そういうとディアライガは鎌を消し、ゲイザに向かって歩いた。
「ドールの存在ヲ許す。オマエ達の力、確かニ受け取った」
すると、目の前に黒い剣が現れた。
「これは邪剣ザオグガーズ。オマエの闇の力が強ケレば、コノ剣も強くなる。
シカシ、闇の力は己の心さえモ呑みこんでシマウ。気をつけろ」
そういうと、ディアライガは闇に消えていってしまった。
「よかったな、マイ」
「はい。とても嬉しいです」
マイはゲイザに微笑んで見せた。
続く
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