第]Y話「思い出」
光の精霊に許しを貰い、聖剣ラスガルティーを貰ったゲイザは、
先の戦闘で魔力を使い果たし、倒れてしまったミリアを安静な場所へ
寝かせるためにマイと共に真聖の神殿の先にあるイファムへ向かった。
「とりあえず、ミリアを宿屋で寝かせよう」
ミリアを背負ってゲイザはイファムの入り口で宿屋を探した。
イファムはファムレイグの中でも一番小さい村で、人口もそんなに多くはない。
しかし一番緑がある。この国で唯一この村だけが畑仕事などの農業をやっている。
「宿屋は、あっちですね」
マイは一人でスタスタと宿屋に向かって歩いていった。
ゲイザは遅れてマイの後をついていった。
そしてゲイザは宿屋の部屋を取り、ミリアの部屋のベットに寝かせた。
「ふう……疲れた。そうだ、マイ。気分転換に散歩してくるといい。
俺はミリアの面倒をみるからさ。遠慮せずに行って来い」
「――はい、それじゃそうさせてもらいます」
マイは部屋から静かに出て行った。
本当はゲイザは一人になりたかっただけなのだ。
(みんなといるのも結構長いからたまには一人で考え事でもしたかったんだよな)
そしてゲイザはベットの横の椅子に座り、寝ているミリアの顔を見た。
「俺は……なぜここまで来たんだ?なんで、俺は――何が正しいんだ?」
ミリアの顔を見て思い出していた。あの日のことを……
あの日、俺は――タクスと一緒にいつものように剣の稽古をして、
いつも通りの日を過ごしていた。
あの男が現れるまでは……
ラムダ。あいつはミリアを追って、俺達の村まで来た。
そして何もかもを破壊した。
ただ、俺には失うものはなかった。
だけど守るものができた。
「その、答えを……一緒に探してください。
そして、私を守ってくださいね。ボディーガードなんですから」
「守る……か……」
そういってゲイザは自分の拳に力を入れた。
「俺は、何をやっていたんだ?俺はどうすればいいんだ……?」
ドール。俺には最初、よくわからなかった。
昔の戦争のとき、精霊が作り出した殺戮兵器。
感情――心をドール達は望んだ。そして心をドール達は手に入れた。
ドール達は昔いた勇者が封印した。
ミリアとマイはその生き残り、
二人は人のように笑って、泣いて……
しかし、彼女達はドール……
「ドールって何なんだよ、光と闇ってなんなんだよ……」
そういって嘆くゲイザにミリアは気づいた。
「ゲイザ……?」
「ミリア、起こしてしまったのか」
ゲイザは慌ててミリアをみた。
「どうしたの? ゲイザ。そんな真剣な顔して」
「いいや、なんでもないさ。色々と考え事をしてただけだ」
「そう、よかった」
ミリアは微笑んでゲイザを見た。
「よかった?」
「うん。だって、死んでるとか思われたら嫌だからね。それに……」
ミリアはそういいかけて言うのをやめた。
「どうした?」
「ううん、なんでもないの! なんでも、ない……」
そう言ってミリアは俯いた。
「ん、どこか痛いか?」
「違うの。ただ、シャウナさんに許してもらって嬉しかった……存在したい理由を、
認めてくれたのが……」
ゲイザは立ち上がってミリアを見た。
「そうか……」
「うん。――ごめん、ゲイザ。ちょっと眠くなっちゃった……」
そう言うとミリアは再び寝てしまった。
「俺は、ただ前を向いてやるべきことをやる……それでいいんだ」
一方マイは、村の池の近くでしゃがんでいた。
そして水に映った顔を眺めていた。
「ワタシは、子供で段々大きくなっていった……でも、昔の記憶がある――なんで」
マイは昔のことを思い出していた。
ガラドに育てられた日々。
大きくなるにつれて蘇ってくる記憶。
自分が作られた存在ということ。
昔、マイはそのことで苦しんでいた。
「これが、運命?」
次はマイが闇の精霊に存在を認めてもらう番だ。
そのこともあって少し悩んでいた。
「ワタシには、仲間がいる――だから、心配ない。よね……」
そういってしゃがんでいたマイは立ち上がって宿屋に戻っていった。
続く
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