第]W話「光」
ゲイザ達はスレイドに言われたとおり、ミリアとマイの
存在を許してもらうべく、精霊に会いに行こうとしていた。
そして、最初は光の精霊、シャウナのいる真聖の神殿という
ファムレイグ東部にある、白い大理石の古い神殿に来ていた。
「精霊、か……この世界は精霊の力で成り立っているというが、
その精霊と会うなんて――」
ゲイザは少し不安そうにいった。
「大丈夫ですよ。精霊は普通人の前に姿を現しません。ですが、
ドールであるワタシとミリアさんがいるので、大丈夫です」
マイはそういうと、歩いて神殿の扉を開けて中に入ろうとした。
そのとき、マイの目の前に光の壁が現れて、吹き飛ばされてしまった。
「きゃっ!!」
「どうしたんだ!?」
ゲイザはマイを立たせて上げると光の壁が現れた開いた扉の場所を見た。
しかし、さっきの光の壁はなく、普通の入り口になっていた。
「光の壁……ワタシはここには入れませんね」
「じゃあ、私とゲイザは入れるの?」
「はい、そういうことになります……」
ミリアはマイが光の壁で吹き飛ばされた場所まで来て、少し戸惑ったが、
勢いをつけて中に入ってみた。
そうしたら、光の壁は現れず、すんなり中に入れた。
「入れたよ、ゲイザー!」
ミリアはとても嬉しそうにゲイザに手を振った。
「それじゃ、マイ。俺とミリアは行って来るから入り口で待っていてくれ」
「はい」
そういうと、ゲイザはミリアと共に神殿の中へ入っていった。
神殿の中はとても暖かい光が差していて、明るい場所だった。
「暖かい――優しい光だね」
ミリアは光が差す方を目を細めて見た。
「そうだな。さすが真聖の神殿と呼ばれているだけある。だが……
1本道があるだけだな。ここの神殿は」
「多分、その先の部屋に光の精霊さんはいると思うよ。いこ、ゲイザ!」
二人は歩いて真っ直ぐに伸びる一本道を歩いていった。
そして二人はその先の部屋にたどり着いた。
そこには何かを祭るための祭壇が1つあるだけだ。
だが、何もないけれど明るい光がある。
「何もないのに明るい……これは精霊の力か?」
「みて、ゲイザ。光が――」
ゲイザは光を見た。光は人の形を作り、そして物凄い光を放った。
「あなた達……よく来ましたわね。光と闇を持つ少年と光のドールよ」
その美しい声と姿にゲイザとミリアは見とれた。
長い美しい綺麗な髪と美しい顔――そして背中には白い翼。
「光の精霊、シャウナ! ミリアは――ドールは、この世界に存在していいのか、
俺達は聞きに来た」
ゲイザは真剣な眼差しで光の精霊シャウナを見つめた。
「光のドール、ミリア。あなたはどう思うのですか? 存在したい理由、存在したい訳を
話してください」
シャウナは微笑んでミリアを見た。
「私――私は……」
ミリアは少し俯いてからシャウナの方を見た。
「私は、何者かわからなかった。そして、何者か知りたかった。そしてつい最近、
私はドールだということを、仲間から教えてもらいました。私は人間じゃなくて、
ドールといわれた時、正直いってちょっとショックを受けました。」
ゲイザはミリアの方を見た。彼女の話している顔はどこか寂しそうで、悲しかった。
「でも、この私が持っている感情……それは、誰にも拒否できないものだと思います。
今でもこうしてゲイザと一緒にいる時が、嬉しくて、楽しい。そういう感情は誰にでもあって
なければ生きていけない。だから、私は存在したい。楽しく生きたい……ドールであっても、
人じゃなくても――それはただ外が違うだけで、中身は同じだから。
ドールでも、私は笑っていたい。ゲイザの傍にいたいから……存在したい」
ミリアは微笑んでシャウナを見ていた。
シャウナもまた、頷いて目を瞑って微笑んだ。
「そうですか――それがアナタの存在したい理由。わかりました……
ですが、想いだけでも、力がなければ駄目ということを、あなた達がよくお分かりでしょう。
私を倒したら、認めます。それでは、行きますよ」
ゲイザは剣と短剣を構え、ミリアはペンダントを杖に変えてその杖を構えた。
「ミリア、お前と俺の想い、ぶつけるぞ!」
「うん!!」
ゲイザはシャウナに向かって走り、剣を振りかぶった。
「てぇい!!」
しかし、シャウナの目の前に見えない壁が現れて弾き返された。
「なにっ!?」
「光の壁!? マイちゃんが吹き飛ばされた、あの壁だわ!!」
ゲイザは受身をとって、再び剣を構えなおした。
「ミリア、気をつけろ!相手の攻撃がくるぞ!」
シャウナは手のひらに光を溜めて槍を作った。
「くらいなさい、ホーリージャベリン!」
その光の槍をミリアに向かって投げつけた。
「きゃぁっ!!」
「させるかっ!! 刻空斬!」
間一髪で光の槍を空中でゲイザが剣で切り落とした。
「危なかったな、ミリア」
「ありがと、ゲイザ……」
シャウナは微笑んでいた。そして攻撃をする気配もない。
「ミリア、俺に力を貸してくれ。この剣に、ミリアの持っている魔力を全てぶち込んでくれ!」
「わかった、やってみる!」
するとゲイザの剣に、光が集まって刃となった。
「ゲイザ、これが私の力のすべてよ!」
「よしっ……いくぞっ!」
ゲイザは剣を構え直した。そして剣を振った。
「今、光の力、我に集え……神聖、光魔斬!!」
再びシャウナに向かって走り出し、シャウナに斬撃を与えようとする。
そしてまた、光の壁が現れた。
「貫けぇぇぇっ!!!」
ゲイザの剣の光の力が高まり、光の壁にひびが入った。
「壊れて、お願いっ!!」
ミリアも剣に向けて自分の力を送る。
「これが俺達の想いの力だぁぁっ!!」
すると光の刃は剣の3倍まで伸びて、光の壁を突き破った。
そして突き破ったと同時にシャウナを胸から切り裂いた。
「うぅっ……あなた達の勝ちです」
シャウナは翼を閉じて、地に足をついた。
「くっ、勝ったのか……」
「私、疲れ、ちゃった」
そういうとミリアは倒れた。ゲイザの剣に全ての魔力を注ぎ込めば、
疲れて倒れるのも無理はないだろう。
「あなた達の想い、確かに受け取りました。
ドールが存在するのを私は認めましょう……そして、光と闇を持つ少年よ。
この剣を受け取りなさい」
シャウナの前に光が集まり、剣が出てきた。
その剣は光を放っていた。
「この剣を……俺に?」
「はい、この剣は聖剣ラスガルティー。アナタの心の光の力が強ければ強いほど、
この剣はアナタに力を与えてくれるでしょう」
ゲイザはラスガルティーを手に取った。
「ドールであるこの子を守ってあげてくださいね……私の、
子供みたいなものですから」
そういうとシャウナは光になって消えた。
「ミリア……」
ゲイザはミリアを背負ってマイの下へ戻っていった。
続く
FC2 | キャッシング 花 | 無料ホームページ ブログ blog | |