第T話「はじまりの心」


「えい、やあっ、とぉーっ!!」
森の中で稽古の練習をする少年が2人。
木刀を2本もった少年と木刀を一本ち、メガネをかけている少年。
「そろそろ稽古はやめにしないか? ゲイザ」
「ああ……そうだな、タクス」
二人は日陰に入るように木の陰に座った。
「ゲイザ、お前二刀流やめたらどう? だって、結構剣の振りに隙が見えるし」
タクスと言われた少年は隣にすわる少年、ゲイザを見た。
ゲイザは鞘に納まった小刀を片手で握り締めていた。
「すまんな……だが俺はこの小刀を使わなきゃならない」
ゲイザがそういうとタクスはそっか、といって立って両手を広げ背伸びをした。
「そろそろ腹減ってきたな〜……――そうだ、昼飯にするか。
おにぎり持ってきたんだけど、食べる?」
「ああ、お言葉に甘えて食べさせてもらうよ」
タクスは包みに入れておいた二人分のおにぎりを取り出し
ゲイザに1つ投げた。すると二人はおにぎりを包んでいる包みを取った。
「ありがとう……うん、うまいな。このおにぎり」
二人はおにぎりを食べながら空を見ていた。
「平和、だな……こんな日がいつまで続くんだろうな、タクス」
木の陰から見える太陽を目を細めてゲイザは言った。
「そうだね――ん? 村のほうから煙があがってない? ほら、あれ」
タクスはその煙があがっているほうを指差した。ゲイザはタクスが指を差した
ラミアズ村の方をみると煙があがっている。
しかも煙が大きい。
「やばい!もしかしたら……村が焼かれてるかもしれないっ!!」
「早くいこう、ゲイザ!」

「ミリアという娘を知らないかと聞いてるんだ……!!」
「しら……な、い」
「ふんっ!」
倒れていた村人を蹴っ飛ばし、黒いコートを着た男は村を歩いていた。
この男が村を焼き払い、人々を殺している。
そこにゲイザとタクスが現れた。
「これはっ!?」
目の前には血まみれで倒れている村の人が何人もいた。
黒いコートを纏った男の持つ刀には血がついていた。
「まだ生き残りがいたか……ミリアという娘をお前達は見なかったか?」

「そんな人、俺たちは知らない!」
ゲイザがそういうと剣を構えた。
「なぜこのように意味もなく人々を殺す!」
「人など、くだらないものだからな。意味なく生きて、ただ死ぬだけだ。
そのミリアという娘をしらないというなら、お前らも殺すだけだ」
黒いコートを着た男は刀を構えた。
それと同時に柔らかくてぷにぷにしてそうな下級モンスタースライムを3匹召喚した。
「ゲイザ、俺はスライムを倒す!お前はあの男を頼む!」
「わかった!」

「こんな雑魚モンスター!」
タクスは剣を鞘から抜くと両手で構えた。
剣を持った両手に力を込めて、横に構える。
「瞬雷剣!」
雷を纏った剣でスライムを素早く切り裂く。
2匹のスライムが、タクスの剣によって真っ二つにされて消滅した。
「これで終わりだ! 魔法剣、ファイアブレード!」
炎を剣に纏わせ、剣を振って火を飛ばす。
もう一匹のスライムは燃えて消えていった。

黒いコートを纏った男は刀を持ってニヤニヤしている。
「貴様!」
ゲイザはその男に走って近づき剣を振りかぶった。
「魔人剣!!」
気を纏った剣を振り下ろし、謎の男に斬撃を喰らわせた。
しかし、その斬撃は男の持つ刀によって防がれた。
そして男が刀を構える。
「さらに! 魔人、少斬!!」
小刀を小さい鞘から取り出し刀を構えている隙に
さらに斬り付ける。
「ぐはぁっ! お前……やるな。仕方ない、命だけは助けておいてやろう」
そういうと男はフッと笑うと、何やら魔法を唱えて消えていった。

スライム3匹と謎の男を退いたゲイザ達。
「何とか終わったな……」
そういってゲイザは辺りを見渡した。昨日まで平和だった
この村が、今では人は倒れ、家は焼かれている。
「ゲイザ、俺は家の様子を見てくる!!」
そういって自分の家が心配になったタクスは走って家に戻っていった。
「俺も一旦家に戻るか」
ゲイザも自分の家に戻ってみることにした。
そして家に戻る途中、どこかから悲鳴が聞こえた。
「どこからだ……? まさか、俺の家のほうから……!?」
走って自分の家に戻ってみると、なぜか一人の少女が
1匹のスライムに襲われそうになっていた。
「ていっ!!」
ゲイザがスライムに剣を一振りし、撃破した。
ずっと逃げ回っていたらしく、棚に入れておいた食器などが床に
割れて落ちている。
「大丈夫か?」
と言い、ゲイザは座り込んだ少女に手を差し伸べた。
「は、はい……」
少女はゲイザの手を取り、その場から立った。
髪の毛は背中ぐらいまであり、軽い服装。
それに白い羽のついたペンダントをつけている。
「なんで君は、俺の家にいるんだ?」
ゲイザがそう言うと、少女はちょっと焦ったような顔をして
顔を伏せながらゲイザの方を見た。
「それは、その……なぜかは知らないけど、何者かに追っかけられて
この家に逃げてきたんです。決してアヤシイ者じゃないですよ!?」
「な、なるほどな……」
苦笑しながらゲイザは落ちて割れた食器などを拾い集めた。
しかし、怪しい者じゃないといわれたところで、勝手に人の家には行って来て
きてる時点で、とても怪しい人だ。
それから彼女は少し戸惑って言った。
「あの……これからここを出て行っても見つかって殺されるだけだと思うんです…
だから、あなたにボディーガードをしてほしいのですけれど……」
「あぁ……って、なんで俺が?」
食器を拾うのを止めてゲイザは少女の方を見た。
「だって、強そうですし――それに、私なんで追われているのかもわかりません。
ちゃんと自分自身についてわかってないんです……」
(この子になら、言える……)
ゲイザは心の中で何かを決意し、割れた食器をその場において立ち上がり少女に話した。
「俺も昔、捨てられて親もだれなのかわからない。
手がかりになるのもこの小刀くらいだ……」
鞘に収まっている小刀を取り出した。
「俺も、君と同じだ。自分が誰だかわからなかった……
だから、一緒に探しに行かないか?その『答え』を」
ゲイザは少女に手を差し出した。
そして少女はゲイザの手をとった。
「はい……私の名前はミリア。ミリア=ビリアムズです」
ミリアと名乗った少女。ゲイザは何だか知らないけれど
この子と一緒に旅をしたら、自分が何者なのかわかる気がした。

「その、答えを……一緒に探してください。
そして、私を守ってくださいね。ボディーガードなんですから」
彼女はゲイザに微笑んだ。


続く


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